1503 相手の気持ちは?

定点観察

それは、あっという間の出来事

[] 844 相手の気持ちは?

 昨日の帰り道。聞き慣れない音が遠くから聞こえてきた。聞き慣れないというより、似つかわしくないと言った方が正しいかもしれない。ネコの鳴声だった。
 そのまま歩いて行った先に、そのネコはいた。柱の陰からこちらを見て「ミャーミャー」鳴いている。僕に何を訴えかけているのだろう。大きさから見て、まだ子供のようだった。
 ちょっと先の新橋あたり飲屋街みたいなところで、裏の路地からひょっこりネコが顔を出すなんていう風景だったら、想像に難くないし、それなりに餌にもありつけるだろうけど、こんな真新しいビルばかりに囲まれた汐留の街だと、どこか違和感があったし、きれいに整備されすぎてしまって、かなり住みにくいんじゃないかと心配になった。
 だからと言って、僕に何ができるわけでもなく、ただ子猫をじっと見つめるしかなかった。ふと写真を撮ろうと思い立ち、カメラに手を掛けた瞬間、さっと走り出して、僕の視界から消えた。それはまるで、自分に構わないでくれと言わんばかりだった。同情なんかいらないと言われたような気がした。

Posted by ろん