昭和のくらし博物館と田園調布

定点観察

 東京都大田区にある「昭和のくらし博物館」というところに行ってきた。たまたま見た新聞の社説に書かれていて初めて知った。
 最寄り駅は東急池上線久が原駅、または東急多摩川線下丸子駅となっているが、少し歩く距離を稼ぐ意味もあって、手前の池上線雪が谷大塚駅で降り、歩くことにした。周囲に目標物がないので、場所はあらかじめ調べておかないとわかりにくい。一般の民家の軒先をくぐるような感じで、博物館へ。
 個人で実際に使用していた住宅をそのまま博物館としたので、博物館とは言っても、まるで人のうちを訪ねるような感覚で門をくぐる。学芸員の方が、この博物館が作られた経緯や展示内容について親切に教えてくれた。
 残念ながら内部は撮影禁止なので、写真は外観だけ(左)。昭和の「暮らし」をそのまま展示してある。ちょっと前までは珍しくも何ともなかったような家具や生活用品の数々は、どこか懐かしいというか、身近な感じがした。見学後、ほうじ茶とかりんとうまでご馳走になってしまった。
 見終われば、今日の目的は果たしたことになるので、このまま帰っても良かったのだが、せっかくあまり来る機会のない付近にいるのだから…と、田園調布駅まで歩くことにした。さすが高級住宅街の代名詞だけあって、駅に近づくにつれ立派な家が目につくようになった。読売巨人軍の永久欠番背番号3で活躍していた方の家も見かけた。あまりじろじろ見るのはもちろん写真を撮るのもはばかられるので、横目で見ながら通り過ぎる。建物の大きさが周囲のと比べ意外とこぢんまりした感じだった。玄関先を映す監視カメラが物々しい。もちろん玄関には「セコム」のシールが貼ってある。あと、表札がフルネームでそのまま書かれていたのがちょっと意外。当たり前と言えば、そうかもしれないけれど、あの有名人の名前が表札になって掲げられていると、本人のというより何かのネタとかサンプルのような感じがしてくる。表札の作成例で見かける「徳川家康」とか「福沢諭吉」なんていうのと同じ感じ。
 N邸から田園調布駅まで数分で着いた(写真上)。どうせ東横線なんて使わないのだから、何も駅から近くなくてもいいだろうに。なんでここに住むことにしたのか機会があったら(ないけど)聞いてみたい。かつて練習場のあった多摩川グランドに近いから?違うだろう。
 駅から放射状に伸びる街路と街路樹(写真左)がとてもきれい。高い建物がなく整然とした街並み…。この田園調布を参考に作られた東武東上線のときわ台は、ここまで徹底できなかった。今でも都内にしては比較的広い敷地にゆったりと建物が建っているけれど、駅前には(あまり高さはないものの)ビルが建ち、先日はとうとうマンションまで建ってしまった。この差はいったい何なんだろう、と考えさせられた。
 日中は暖かかったが、15時を過ぎると風がさらに強くなり、もうだいぶ日も傾いてきたので、急いで帰ることにした。

Posted by ろん