ドキュメント気象遭難/羽根田 治
ドキュメント気象遭難 羽根田 治 山と溪谷社 2003-05 |
気象の変化による山岳遭難事故7件の例を挙げ、その背景を探っている。事故のひとつひとつを見ていくと、あのときこうしていれば…という事実が数々と出てくる。そしてその多くが、遭難事故を予感させる前兆現象がわかっていながら、早めに決断できなかったばかりに、命を失うという大きな事故になっていっている。「勇気ある撤退」口で言うのは簡単だが、それがいかに難しいかが、この本を読んでいてよくわかる。それは山の初心者であろうと、ベテランであろうと共通の難しさのようだ。本書でも触れられているが、遭難現場で亡くなっている、もしくは死線をさまよっている人がいるのに、「力になれないから」とか「救助隊に任せた方がいい」と言って、その場を通り過ぎてしまう登山者たちが少なからず存在するという事実は、ちょっとショックだった。極限状態だと人間の本当の姿が浮き彫りになる…勇気ある撤退とともに考えさせられる話だ。
(2004/8/31) 【★★★★☆】 -04/09/05更新