1252 タクシードライバー
最近、仕事でサーバやらPCやらを持っていかなければならない機会があって、毎日のようにタクシーを利用している。持っていく場所はとても近所なので、ワンメーター程度と乗車時間はかなり短い。今日もタクシーに乗り込んで、行き先を告げると「すみません、不慣れなもので、道案内してもらえますか?」と運転手氏。左、右と指示しながら、タクシーは進んでいく。すると運転手氏は「実は今日がお客さんを乗せて走るのは初めてなんですよ」と話し始めた。「最近話題の自動車会社をクビになっちゃいまして…」という。「まさか、この歳になって、家族とローンを抱えてこんなことになるなんてねぇ…」と笑顔で話す。まるで絵に描いたような境遇に、僕は「大変ですね…」と声を掛けるのが精一杯で、それ以上何も言えなかった。運転手氏は「社員は一生懸命がんばってるんだけどねぇ、上があんなのだから、どうしようもないですよ」と勤務先の会社に怒りの矛先を向けてはいるが、やはり笑顔だ。もう自分の境遇を達観しているのかもしれない。このままタクシーに乗って、話を聞いてみたい衝動に駆られたところで、目的地に到着。達観した表情の運転手氏はやはり笑顔で走り去っていった。(2004.7.2)