8004 開館20周年特別展 円山応挙―革新者から巨匠へ

三井記念美術館で開催中の「開館20周年特別展 円山応挙―革新者から巨匠へ」を鑑賞。
円山応挙といえば、自分にとっては、現代の感覚に完全に通じるような、子犬の作品を思い出す。
これまでも多くの展覧会で彼の作品を鑑賞したが、彼の作品を中心にまとまってみるのは初めての機会だ。
冒頭で紹介されていた《元旦図》は、初日の出を見る袴姿の男が後ろから描かれている。
どうやらこれは、応挙自身ではないかを言われていて、その描き方がなんともユニークだ。
ユニークといえば、その後に続く《夕涼み図》も興味深い。
素っ裸で、うちわを仰ぐ男の姿を、軽い線だけで描いている。
これも応挙の作品?と思ってしまうが、よく見れば、人間の体つきを捉えていて、しっかりと観察できていなければ描けないだろうと思う。
凸レンズを嵌めた箱を通して見ると立体的に見えるという”眼鏡絵”は、西洋画の遠近法を応用して描かれていて、これに応挙も手掛けていたり、《鶴亀鹿蒔絵三組盃》では、蒔絵のデザインも自身で手掛けていたようだし、《竹図風炉先屏風》のように、墨を弾きやすい金箔という素材をあえて活かして、竹の茎の質感を出す工夫など、応挙は好奇心旺盛で多才な人だったようだ。
写生に基づく応挙の絵のリアリティさは、随所に現れている。
《出山釈迦図》は、数年間の苦行を終えて、雪山を降りた釈迦を描いている。あとから検索してみると、応挙以外にも、このモチーフで多くの作品が描かれていることを知ったが、リアリティさでは群を抜いていることがわかる。
金刀比羅宮表書院を障壁画である、《遊虎図襖》1787年(天明7年)はが写真撮影可能になっていた。フワッとした毛皮の質感がよく出ている。虎のなかになぜかヒョウが混じっているのは、ヒョウは、虎の雌と思われていたから…らしい。
この作品のすぐ右隣で、気になったのは、《虎皮写生図屏風》で、虎ではなく”虎の皮”を描いている。
これに合わせて虎の詳細な寸法が記されていて、他の作品の作画資料となっている。
実物の虎を見たことはなくても、リアルに描きこまれているのは、こうした準備がなされているからなのだ。

《驟雨江村図》も写真撮影可能な作品のひとつ。
驟雨とは、にわか雨のことらしいが、いまでいうところの、ゲリラ豪雨のようだ。
なんとも不気味なくらいの雨と風が描かれた場所を支配している。
雨のしぶきのせいか、画面全体がもわっとしていて、写真のピントが合わない気がした。伊膝博文の旧蔵品とのこと。
そして、応挙らしい作品《雪中狗子図》《雪柳狗子図》《雪中竹梅狗子図》は、いずれも子犬を描いているが、描かれた時期によって、子犬の表情が違っていて興味深いが、ここまで愛らしく描く人はそういまい。最後の展示室にあった、円山応挙と伊藤若冲の共作といわれる《梅鯉図屏風》と《竹鶏図屏風》は、今日一番鑑賞したかった作品だった。
応挙は「梅と鯉」、若冲は「鶏」という、それぞれが得意とする画題になっているところが楽しい。
右側の、応挙の描いた梅の木の下の鯉が、左側の若冲の描く鶏に顔を向けるようになっていて、逆に左側の鶏は右側に向けているところなど、お互いの存在を認め合う構成になっている。




