7807 ヒルマ・アフ・クリント展

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東京国立近代美術館で開催中の展覧会「ヒルマ・アフ・クリント展」を鑑賞。

ヒルマ・アフ・クリント展
ヒルマ・アフ・クリント展

初めて聞いた名前だと思ったが、これは決して“不勉強”ということではなく、これまであまり知られておらず、近年急速に注目を集めているというのは事実だからだ。

スウェーデン出身の彼女は、抽象画の先駆者と言われているカンディンスキーやモンドリアンよりも早く純粋な抽象画を描いた画家なのだという。

それなら、もっと早く知られていいようなものだが、男性中心の美術界おいて、そもそも女性というだけで軽視されてきたうえに、自身も「死後20年は公開しないでほしい」と遺言にしたなどの理由で、これまで日の目を見なかったようだ。

章構成としてはこんな感じで、彼女の画家としての人生を初期から晩年までを辿っていく。

第1章 アカデミーでの教育から、職業画家へ
第2章 精神世界の探求
第3章 神殿のための絵画
第4章 「神殿のための絵画」以降:人智学への旅
第5章 体系の完成へ向けて

《夏の風景》1888年
《夏の風景》1888年

裕福な家庭で生まれた彼女の初期の頃の作品は見ての通り、抽象とは無縁と言ってもいいくらい。

ただ、どことなく何かを感じさせるものもある。

繊細に描かれた水彩画
繊細に描かれた水彩画
《人体研究、男性モデル》1885年
《人体研究、男性モデル》1885年
《「5人」無題》1908年
《「5人」無題》1908年

その後、神秘主義やスピリチュアリズムにも傾倒し、同じ思想を持った4人の女性芸術家と芸術家集団「5人(De Fem)」を結成。

これは、その5人」のメンバーが描いた絵画で、トランス状態で見たものを描いたらしい…。

ものすごい大きさ
ものすごい大きさ

今回の”目玉展示”ともいえるのが、この「10の最大物」という作品。人生の4つの段階(幼年期、青年期、成人期、老年期)をテーマにしたもので、高さは実に3mを超えるそう。

そして、すごいのは、この作品が描かれた速さで、10枚に制作期間はわずか2ヶ月…つまり、1枚あたり1週間以内に仕上げたことになる。

《10の最大物、No.1/2、幼年期》
《10の最大物、No.1/2、幼年期》
《10の最大物、No.3/4、青年期/No.5、成人期》
《10の最大物、No.3/4、青年期/No.5、成人期》
《10の最大物、No.6/7、成人期》
《10の最大物、No.6/7、成人期》
《10の最大物、No.8、成人期/No.9/10、老年期》
《10の最大物、No.8、成人期/No.9/10、老年期》

「白鳥」シリーズは、白と黒のような、”対立”が描かれている。

解説を読むと、順を追っていくと、二項対立間の分離と統合が繰り返され、やがて性的な画面へと落ち着く…とあった。

《白鳥》シリーズ
《白鳥》シリーズ
《白鳥、No.1》1914-1915
《白鳥、No.1》1914-1915

冒頭の二項対立のあたりはわかったが、最後にたどり着くのが、オウムガイのような形というのは、やっぱりあまりよくわからない。

理解するのではなく感じるべきか。

《白鳥、No.7》1915
《白鳥、No.7》1915
《白鳥、No.20》1920
《白鳥、No.20》1920

これまで紹介されてきた作品は、自身が構想した神殿を飾るためのものだったそう。

「神殿のための絵画」は途中4年の中断期間を挟んで、約10年をかけて制作されたが、結局神殿は作られることはなかったそうだ。

その後、作風はガラッと変わる。

「神殿のための絵画」一覧
「神殿のための絵画」一覧
画風がガラッと変わる
画風がガラッと変わる
《原子シリーズ》
《原子シリーズ》

これまでの”大作”と比べると、ずいぶんとこぢんまりとしている。でも、何かにつきう動かされて作品が生み出されているという感じは伝わってくる気がする。

《地図:グレートブリテン》1932
《地図:グレートブリテン》1932

晩年は水彩画を中心とした作品が多い。この作品は、上空から見たイギリスへ、南東(ドイツ)から不吉な風を吹きかける人物が描かれ、のちの世界大戦を思わせる予言的な作品となったという。これまでのスピリチュアルな活動を考えると、こうした作品にも、言外にいろいろと意味があるんじゃないかと思えてくる。

世界で注目を集めていて、巡回しているため、スウェーデンでで作品が見られない事態になっているとのこと。

そんな状況のなかで、こうして日本で見られるのは、とても貴重かもしれない。

Posted by ろん