7693 特別展「志村ふくみ 100 歳記念 ―《秋霞》から《野の果て》まで―」

大倉集古館で開催中の特別展「志村ふくみ100歳記念―《秋霞》から《野の果て》まで」(後期)を鑑賞(昨年前期を鑑賞)。
ただ正直言って、絵画や彫刻などと比べて”着物”は、さらにとっつきにくいジャンルのような気がする。
そもそも、”紬織り”という言葉の意味からよくわかってない。
真綿から手で紡いだ糸や草木染めなど、自然素材を活かした素朴な風合いが特徴の着物のことらしい。
今回紹介されている、志村ふくみも、まったく知らない方だったが、人間国宝にも認定された染織家で、現在100歳でお元気とのこと。
染織との出会いは30歳を過ぎて家事や育児をしながらで、かつて染織の道を志した母に学んだそう。
彼女が初めて織った《着物《秋霞》》は、第4回日本伝統工芸展で初めて受賞をしている。
母親からは、この作品に対して、「あんたはこれ以上のきものを生涯織れへんよ。このきものはあんたの力の限りがこもっているから」と言われたという。
ちなみに、この日本伝統工芸展は、毎年日本橋三越に行って鑑賞しているあのイベントのようで、昨年9月に鑑賞したのは、その第71回だった。
すごいイベントだったんだ…。
紬降りを作品の解説付きで鑑賞したのは、ほとんど初めてだったが、どれも見れば見るほど奥深さを感じた。

特に、前期で展示していた《月の湖》はよかった。思い入れの強い琵琶湖のほとりで、月がのぼった情景に感動して織りあげたというその色合いは、まさにその風景を想像させてくれる。
着物をキャンバスにして、彼女の感じたものを描き出しているのだ。
今日紹介されていた《風露》も印象的だった。
これは、切継(きりつぎ)と呼ばれる小さな布片を接ぎ合わせる技法で、紬の端切れをつなぎ合わせて着物に仕立てている。
端切れの組み合わせなのに、まるで最初からこうした作品になることが運命付けられていたかのよう。
それを”裏付ける”エピソードも紹介されていた。
彼女が体調を崩していたとき、療養がてら織りためてきた裂(きれ)が詰め込まれていた葛籠(つづら)のふたを開けたら、とたんに小さな裂たちから「私をつかって」と話しかけられ、そのとおりに裂を切り貼りしモザイク模様を作るのに夢中になるうちに、体調も戻っていったという。
作品を鑑賞していると、このエピソードはけっして”まさか”とは思わなかった。