7478 「国芳の団扇絵」展

今日は午後から太田記念美術館へ。
最寄りの原宿駅付近はから表参道にかけては、いつものひょうに大混雑しているが、今日は美術館前も、特に美術館に用事がなさそうな人たちも大勢いた。
浮世絵を鑑賞していれば、歌川国芳の名前はしょっちゅう登場するが、今回の企画展では、国芳の団扇絵に絞った展示が行われていることが最大の特徴。
団扇は、暑さをしのぐためだけではなく、デザインやお洒落を楽しむための必須アイテムとされた。
絵柄のなかに、雪が降っていたり、着物を着こんだりした様子などもあったが、団扇が、夏の暑い日に使うとは限らないということなのだろう。
ただ、団扇に貼るための絵である団扇画は、団扇が消耗品であったことから現存数が少ないのだそうだ。
今回初展示作品約100点を含む220点が展示されている。

ポスターにも採用されている《鏡面シリーズ 猫と遊ぶ娘》は、娘が鏡に向かって猫に踊りを踊らせている様子だそうだ。
解説に「猫の迷惑そうな表情」とあったが、なんとも自然な日常が描かれていて微笑ましい。
《絵鏡台合かか身 猫》は、団扇の表に独特なポーズをする猫たちを描き、裏には閉めた障子に写る影絵になっている。
団扇の構造をうまく使っていておもしろい。
タイトルの鏡台は兄弟を引っ掛けているというし、描かれているのは獅子(しし)・みみづく・はんにゃあめん(般若面)だそうだ。
あえての「にゃあ」だろうが、これに限らず、江戸時代の言葉は、とにかくなにかしらと韻を踏んだり言葉と言葉を引っ掛けないと気が済まないくらい、あちこちに”トラップ”が仕掛けられているような気がしてしまう。
猫の擬人化は序の口で、本来は回される立場の独楽が擬人化され、なぜか達磨人形を回していたり、化粧道具が擬人化して、かんざしやくしなどが歩いてる…といった、かなり独特の世界観がある。
後半は歌舞伎の演目が中心だったこともあって、ちょっとわかりづらい感もあった。
団扇や扇子が輸出され海外におけるジャポニズムにも影響したなんてことも意識してみると、より興味深く鑑賞できた。