7581 第71回 日本伝統工芸展
去年に続いて第71回「日本伝統工芸展」を鑑賞のため、日本橋三越へ。
本店は、さまざまな卓越した工芸作品を一同に(しかも無料で)鑑賞できるありがたい企画だ。
多くの作家が参加しているためか、あまり見られないモチーフの作品もいろいろと見つけることができて楽しい。
沖縄のマングローブの森がモチーフというところが面白い。薄く切った夜光貝を貼り合わせているというところでは、昨日見たモザイク画のよう。
比較するわけではないけど、こちらは加工した夜光貝だけを使って景色を表現するというのはかなり難しそうだ。
この作品のモチーフ…蓋の表は日食で裏は月食だそう。
皆既日食の漆黒の部分は、たしかに漆と相性がいい気がする。
そして、その周囲の紅炎(こうえん…つまりプロミネンス)もうまく表現されている感じ。
この作品は、暗天の荒れた海の波間の船に見立ている。
黒い鉄地に、大波、雨、海面が表現されているという。
ひとつの金工作品にそういった周囲の空気まで感じられるのはすごい。
これまで海洋生物をテーマに作り続けてきた作者による、こちらは夕暮れの海を泳ぐ鯨をイメージしたという。確かに言われてみると、もうクジラにしか見えない。
これが・・・
なんとなく今回一番気になった作品だった。
触れると崩れていきそうな鬼灯が舞っていて、なんだか幻想的な感じがする。
横から見ると、鬼灯は黒い部分にもかかっていて、背景が白とは違った存在感がある。
次に・・・
大きな皿の上を走り回るたくさんのカニたち。
面白いモチーフだな…と思って写真を撮っていたら、実は昨年も同じ作者の作品を撮っていた。興味の感じ方はやはり同じなのだ。
「クレーン」がモチーフになっている着物なんて初めて見た。モダンというか、とてもデザイン性に富んでいる一方で、よく見るとクレーンらしさもよく再現されている。
重機ファンも納得できそうな出来栄えで楽しい。
描かれているのは”あすなろ”で、”あすなろ”とは”ヒバ”(=檜葉)のことだそうで知らなかった。ちょっと北欧の空気を感じたのは、このデザインとモチーフが近いからだろうか。とても爽やか。
今回もたくさんの作品で楽しませてもらった。
ただ、他にもここで紹介しできてない気になった作品はあったものの、(昨年の記事ではあまり詳しく取り上げていなかったが)昨年と比べると正直“これは”という気になった作品があまりなかった気がした。