7581 第71回 日本伝統工芸展

博物館・展覧会,芸術・デザイン

去年に続いて第71回「日本伝統工芸展」を鑑賞のため、日本橋三越へ。

本店は、さまざまな卓越した工芸作品を一同に(しかも無料で)鑑賞できるありがたい企画だ。

多くの作家が参加しているためか、あまり見られないモチーフの作品もいろいろと見つけることができて楽しい。

第71回 日本伝統工芸展
第71回 日本伝統工芸展
約550点もの展示
約550点もの展示
松崎森平《螺鈿堆錦箱「汽水域」》
松崎森平《螺鈿堆錦箱「汽水域」》

沖縄のマングローブの森がモチーフというところが面白い。薄く切った夜光貝を貼り合わせているというところでは、昨日見たモザイク画のよう。

比較するわけではないけど、こちらは加工した夜光貝だけを使って景色を表現するというのはかなり難しそうだ。

小原 治五右衛門《城端蒔絵飾箱「Eclipse」》
小原 治五右衛門《城端蒔絵飾箱「Eclipse」》

この作品のモチーフ…蓋の表は日食で裏は月食だそう。

皆既日食の漆黒の部分は、たしかに漆と相性がいい気がする。

そして、その周囲の紅炎(こうえん…つまりプロミネンス)もうまく表現されている感じ。

藤川耕生《布目象眼五角鉢「濤」》
藤川耕生《布目象眼五角鉢「濤」》

この作品は、暗天の荒れた海の波間の船に見立ている。

黒い鉄地に、大波、雨、海面が表現されているという。

ひとつの金工作品にそういった周囲の空気まで感じられるのはすごい。

松原 輝《欅拭漆蓋物「夕映鯨」》
松原 輝《欅拭漆蓋物「夕映鯨」》

これまで海洋生物をテーマに作り続けてきた作者による、こちらは夕暮れの海を泳ぐ鯨をイメージしたという。確かに言われてみると、もうクジラにしか見えない。

これが・・・

なんとなく今回一番気になった作品だった。

井戸川 豊《銀泥彩磁鬼灯文鉢》
井戸川 豊《銀泥彩磁鬼灯文鉢》
黒い背景にも映える
黒い背景にも映える

触れると崩れていきそうな鬼灯が舞っていて、なんだか幻想的な感じがする。

横から見ると、鬼灯は黒い部分にもかかっていて、背景が白とは違った存在感がある。

次に・・・

大きな皿の上を走り回るたくさんのカニたち。

伊藤 北斗《釉刻色絵金銀彩鉢》
伊藤 北斗《釉刻色絵金銀彩鉢》
横にもカニが…
横にもカニが…
昨年の作品
昨年の作品

面白いモチーフだな…と思って写真を撮っていたら、実は昨年も同じ作者の作品を撮っていた。興味の感じ方はやはり同じなのだ。

山城 直子《型絵染着物「クレーンのある風景」》
山城 直子《型絵染着物「クレーンのある風景」》

「クレーン」がモチーフになっている着物なんて初めて見た。モダンというか、とてもデザイン性に富んでいる一方で、よく見るとクレーンらしさもよく再現されている。

重機ファンも納得できそうな出来栄えで楽しい。

遠藤 あけみ《型絵染着物「あすなろの森」》
遠藤 あけみ《型絵染着物「あすなろの森」》

描かれているのは”あすなろ”で、”あすなろ”とは”ヒバ”(=檜葉)のことだそうで知らなかった。ちょっと北欧の空気を感じたのは、このデザインとモチーフが近いからだろうか。とても爽やか。

今回もたくさんの作品で楽しませてもらった。

ただ、他にもここで紹介しできてない気になった作品はあったものの、(昨年の記事ではあまり詳しく取り上げていなかったが)昨年と比べると正直“これは”という気になった作品があまりなかった気がした。

Posted by ろん