好きになる麻酔科学/横山 武志
- 好きになる麻酔科学 第2版 (KS好きになるシリーズ)
- 諏訪 邦夫(監修)、横山 武志(著)
- 講談社; 第2版 (2018/11/19)
麻酔というのは、どこか“ミステリアス”な医療技術だと思ってしまう。
たとえば、全身麻酔だったら、自分の意識のないうちに手術が行われるわけで、その間、どのような配慮をされ、自分の身に何が起きるのだろう。
そんな疑問を持ったためか、図書館で手に取ってしまったのが本書だ。
まず麻酔の基礎知識に続き、点滴をしたり麻酔薬を投与するときのためにする“静脈穿刺”(じょうみゃくせんし)のやり方を紹介。
本書は、医学生や研修医の会話で進むので、全体的にわかりやすい。
針を刺してから血管を探さないように…なんて注意書きは、素人の自分が見ても、当たり前と言えば当たり前だよなぁ…なんて思うところもあって、こういうところもとっつきやすい。
また、麻酔の歴史などの紹介もあって、このあたりもとても興味深い話だ。
これまでも、さまざまな吸入麻酔薬が登場してきたが、毒性や痙攣などの副作用によって使用されなくなる一方で、新しい薬剤も登場。1965年にイソフルラン、セボフルランが登場し、日本では2011年から承認されたデスフルランが主流となり、麻酔もどんどん進化していることがわかる。
「鎮痛と同様に外科手術に大切なものは?」なんて質問も、この本を読まなければ気にすることはなかった。
「滅菌と消毒」と言われれると納得。なるほど。
麻酔をするにあって気をつけることが山のようにあることにあらためて驚かされる。
患者の状態によって気をつけなければならないことが、ありすぎる。
わかりやすい例で言えば、肥満患者の対処も気をつけることは多い。
血圧の変動や不整脈、腹圧でハイの一部が押されてしまうことで麻酔の効きが悪くなってしまうことに注意する。
喫煙の有無も影響する。
心電図や胸部X線写真などでも確認すのだが、もう難しすぎてさっぱり分からない。
実際に麻酔をするとき…酸素、笑気、空気…とあって、前述の麻酔薬に加えて、笑気がなんで出てきたのでなんでだろうと思ったら、笑気ガスは併用する必要があるようだ。
意識を消失させるだけではダメで、さらには鎮痛も必要。
気管挿管したときにむせたり身体を大きく動かしたりしないように筋弛緩薬も必要。
それぞれの薬が効く順番も大事。
意識があるのに筋肉が弛緩してしまったらこんなに怖いことはない。
手術中に麻酔が維持される必要もあるし、無事手術が終わったら、きちんと覚醒しないといけない。
麻酔が効いているあいだも、生命を維持するために要件をすべて適切に満たさなければならないので、それをつねに意識していないといけないし、それに加えて、乳がんでの麻酔、小児の麻酔、帝王切開での麻酔…と、事例に合わせた対処法がある。
…と、いかんせん、内容は“専門書”そのものなので、さすがに完全には読破は難しく、麻酔ひとつ取っても、手術の大変さがよくわかった。