へんな死にぎわ/のり・たまみ

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へんな死にぎわ (角川文庫)
のり・たまみ

角川書店(角川グループパブリッシング)

 

自分の記憶の限りでは「へんないきもの」以来、さまざまなジャンルで、「へんな…」と始まる本がいくつも登場している。ふだんの生活や、一般常識では考えられないあたりが「へんな」ところなのだろう。

と思ったら、この著者は、さまざまな、「へんな…」を書いているようだ。

本書は、古今東西のさまざまな著名人たちの遺言や亡くなる直前のエピソードを紹介している。

淀川長治の「もっと映画を観なさい」なんてのは、本当にそう言ったかどうか分からなくても、実際に言いそうだ。

「アイスクリームが食べたい」(国木田独歩)とか、「富士山が見たい」(吉田茂)というのは、当人にしか分からない何かがあったのだろう。

先日、非常のときに人は本性を現すと書いたが、死というのは、究極の非常なわけで…

「私はまだ見たことの半分も話していない」(マルコポーロ)
「もっとシャンパンを飲んでおけばよかった」(ケインズ)
「イヤだよー、死ぬのは」(一休)

といった後悔の言葉を口にする人がいる一方で、死を恐れず、前向きにとらえるこんな言葉が、心に残った。

「天国では耳が聞こえているといいなぁ」(ベートーベン)
「いっぱい恋いもしたし、おいしいものも食べたし、歌も歌ったし、もういいわ」(越路吹雪)

できることなら、こんな死に方をしたい。

また、遺言の書き方や、絞首刑と斬首刑の比較など、数編のコラムなども興味深かった。

「清水の舞台から飛び降りる」を文字通り行った人が、1694年から1864年までの間に、234件 生存率85%…という話を始め、死に際に関する小ネタがたくさん。

死という重いテーマだが、読みやすい文体と相まって、さらりと読める。

Posted by ろん