博士の愛した数式/小川 洋子

■文学・評論,龍的図書館

4101215235 博士の愛した数式
小川 洋子

新潮社 2005-11-26
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もともと高校は理科系の勉強をしていたのに、自分の行けそうな大学があまりないと見るや、一転して文系の勉強しかしなくなった僕にとっては、“数式”とか“数学”と聞くと、ちょっと身を構えてしまう癖がある。

いま、まさにベストセラーとなって、映画化もされたこの本をふーさんに貸してもらうまでは、やはり取っ付きにくく、自分から読もうとはしなかっただろう。

多少数学の知識があった方が理解は深まると思うが、この本を読むにはそんな知識はいらない。肩肘張らずにどんどん読める。

相手に対して、何かの見返りを求めるようなことは決してなく、それぞれがそれぞれを畏敬の念を持って敬い、尊重している様子が感じられる。つい相手を大事に思う気持ちを忘れ、相手に何かを期待したり、求めたりしてしまうものではないか。この物語では、そうした場面はひとつも出てこないように思う。

こういう関係になることは、とても難しいはずで、ちょっと羨ましくも思った。

家政婦さん、家政婦さんの息子、そして博士の何とも不思議な関係は、相手に対する深い尊敬と優しさに満ちているのだけれど、博士の80分間しか記憶できないという制約が、このような絶妙な関係を生んだとすると、ちょっと複雑な気もしてしまう。

(2006/2/5) 【★★★★★】 -06/02/05更新