1065 人体の不思議展・2

定点観察

先日「人体の不思議展」という展示会に行って来た。腐敗しないようを樹脂に置き換えた標本が展示されている。標本はプラスチックのような状態となり、かすかな弾力を持っていて耐久性もあるので、触れることもできる。これら標本は、すべてもともとは人体であり、本物、言い換えれば、遺体なのだ。たくさんの標本たちが並ぶ会場は、非常に多くの人たちでごった返していた。当然だろうけど、表情や雰囲気からは、遺体を前にしているとはとても思えない。そういう感じだから、一層これらの標本が、もともと意志を持った人間だったということが、にわかに信じられなくなる。赤ちゃんとして生まれ、青春時代を過ごし、成人となり、何らかの事情で亡くなり、こうして今、たくさんの人の前で、本人ですら見たことのない内臓や神経、血管、神経をさらしている…。これらの生前の意志によるものとのことだが、この人たちも、人生があったと思うと、まともに見ていられなくなってしまった。人は亡くなってしまったら、単なる物体になってしまうのだと、否応なしに思い知らされる。このような姿になったのは、標本として人々の役に立ちたいという本人達の意志なのだから、あまり余計なことは考えない方が本人たちのためなのだと、自分に言い聞かせたのだけれど…。やはり複雑な気分になってしまった。

Posted by ろん