547 カプセルタワー

定点観察

「中銀カプセルタワー」というビルをご存じだろうか? 銀座のはずれの目の前は新橋という、8丁目にそのビルはある。ビルの名前を知らなくても、この建物を見れば、この付近を通ったことのある人であれば、「あぁ、あのビル・・・」と、思い出すと思われるくらい、その形状は独特。1972年に建てられたこのビルの特徴は、何と言っても、部屋のひとつひとつがカプセル化(ブロック化)されていて、それが何個も積み上がっている、その形。一階には、カプセルのサンプルが置かれ、中の様子をうかがうことができる。カプセルひとつに1枚の丸い窓、中にはすべて作りつけになっている設備(狭いベッドに、ユニットバス?、テレビ、電話、おそらくはオープンリールのテープデッキなど・・・)が、よく言えば機能的に並んでいるが、なにぶん1970年代のものだからざっさ30年近く経つ最新設備。雰囲気は、まさに「一昔前」の近未来そのものと言った感じ。カプセルから外を眺めれば、宙に浮いた自動車が走り回ってる・・・そんな風景が似合う。でも、このカプセルひとつの狭さを考えると、このビルが登場した時代を考慮しても、お世辞にも過ごしやすいとは決して言えない。果たして、居住性という点については、どこまで考えていたのだろうか? 銀座のはずれとは言え、東京のど真ん中に、30年もそのまま時間の流れを止めたような場所がずっと残っているのも不思議な感じだし、このビルの設計した黒川紀章という日本を代表する建築家が、このようなある意味これほど実験的な建物を、模型ではなく実際に建てちゃうところもなんだかすごい。1970年代という時代が、このような「作品」を作ることを認めたのだろうか? このご時世ではこのような試みは難しいだろうね。世の中全体にそんな余裕がないという感じ。仕方がないのかな?◆それにしても、こういうビルを見ると、不思議とワクワクするんだよなぁ。何故なんだろう?

Posted by ろん