8132 展覧会「北欧のテキスタイルと暮らし展 ― Beauty for All」
今日は、日本橋高島屋で開催中の「北欧のテキスタイルと暮らし展 ― Beauty for All」を鑑賞。
北欧デザインについては、これまで何度となくさまざまな展覧会を見てきたが、見て思うのは、北欧デザインの良さのひとつには、押し付けがましくないというところだろう。
「美しい」みたいな大げさなものではなく、「あ、いいな」となんとなく思う。そんなところがいい。

本展で紹介されていた、スウェーデンの社会思想家、エレン・ケイの著作「Beauty for all」では「美を享受する権利」は「全ての人に等しくある」という理念に基づいているそうだ。
「美」とは、特別なものではなく、家庭に見られるような、慎ましく、簡潔かつ誠実な調和だと考えた彼女が重視したのは”手仕事”だった。
手仕事といえば、当時のアーツ・アンド・クラフツ運動と本質的には共通の理念を持っていたと解説にあった。
同じような理念が地域を超えて出てくるというのは、これは人間にとって普遍的な考えなのだろう。
手工芸をルーツとした北欧スタイルが、伝統的な枠組や様式を否定し、機能性・合理性・前衛性を追求した芸術・文化運動である「モダニズム」と融合していくのは、あらためて考えると、ちょっと不思議な気もする。
解説では「本質的な部分で融合し、異質な二つのデザインが奇跡的に結合した」とだけあったので、よくわからなかったが、自宅に帰ってから、Geminiに聞いてみると、ざっくりこんな答えが返ってきた。
1. 「民主化」という共通のゴール
「良質なデザインは富裕層だけのものではなく、すべての人(庶民)に等しく与えられるべき」という強い社会民主主義的な思想は、手仕事もモダニズムも実は目的は共通していた
2. 工業化の遅れと職人技の継承
イギリスやドイツに比べて工業化の波が遅れて北欧諸国では、機械の移行は、”高度な職人技を再現するための道具”として捉えられたため、モダニズムの簡潔な造形の中に、手仕事特有の曲線や肌触りが自然と組み込まれた
3. 過酷な自然環境と「家」への集中
北欧の厳しい自然環境においては、必然的に家の中で過ごす時間を長くなる。機能性だけでは心理的に耐え難く、モダニズムの形を借りつつも、素材には木を用い、手仕事の記憶を残という独自のスタイルが確立された
ものすごく腹落ちした。
今回の展覧会は、テキスタイルを中心に紹介したものとなっている。
写真撮影は自由だったので、これはこれで、どれを撮ろうか迷ってしまって、つい、いろいろ撮ってしまう。
マリメッコでおなじみの”ウニッコ”などもあった。
プリント布《Kyoto》は、ハンス・クロンダールの作品で、日本での研修旅行をきっかけに制作されたそう。
ティオ・グルッペン作品のコラージュでは、なんだか見たことのある意匠があると思ったが、解説にはなかった。
あとから調べてみると、家紋《結び雁金》にそっくりで、間違いなく日本に影響を受けたはず。

アグネータ・フロックのタペストリー《手の中の鳥》にあった解説「手の中の鳥は森の10羽に勝る」というスウェーデンの諺が気になった。「今持っているものに満足し、危険を冒してまで多くを求めない」という意味だそうで、なんだかとてもスウェーデンらしいと思った。
エピローグの解説で、スウェーデンの義務教育の授業のなかに、テキスタイルや木工といった手工芸の基礎を学ぶ”スロイド”という科目があるそうだ。
この授業で「暮らしに根付く伝統表現を理解すること」と「主体的な美的判断力を育むこと」を学ぶそうだ。
こうしたところも、スウェーデンらしさが感じられて、とても興味深い。






