昭和ノスタルジー解体/高野 光平

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昭和ノスタルジー解体: 「懐かしさ」はどう作られたのか
高野 光平
晶文社 (2018/4/17)

ものすごいボリュームの本で、巻末の参考文献一覧を含めて377ページもの大作だ。

実際執筆開始から実に7年も掛かったという。

7年経っても、昭和を愛好する“昭和ノスタルジー”というカテゴリは、けっして古くなることはなく、いまも注目されることは多い。

マンガ、テレビ、雑誌、広告、おもちゃ、音楽、映画、ファッションなどなど、あらゆるジャンルの膨大な資料に基づく研究を通じて、昭和ノスタルジーの始まりから現在に至るまでを考察していく。

「ALWAYS 三丁目の夕日」に代表されるような昭和30年代がノスタルジーの対象となるのは、1970年代だったようだ。

この原作の漫画「三丁目の夕日」の連載が始まったのが1974年(昭和49年)であり、当時は10年ほど前の世界がノスタルジーの対象となっていたのは、ちょっと興味深い。

“昭和ノスタルジーブーム”や“昭和三十年代後半”が“定番化”した理由として、なるほどと思ったことのひとつが、「マスメディアを中心に情報が画一的に作りやすい」(p.273)ということだった。

言い換えれば、ステレオタイプな昭和ノスタルジーだ。

昭和39年の東京オリンピック開催前後の様子は、当時を知らない自分でも、なんとなく知った感じがするのは、この時代の情報がとても多く伝わってきているからだ。

「当時を知る人たちが身近にいること」「それを継承できる情報があること」「“画一的”に伝えられたことで共通認識ができていること」が揃うことで、ブームは続くのではないかと思う。

そういった意味では、”平成ノスタルジー“とか”令和ノスタルジー“というのが起こるということはない気がする。

読むのが大変なくらいのボリュームだったが、著者の年代が近いこともあってか、本書で紹介されている内容と、自分の興味や関心がかなりオーバーラップしている感じだった。

やっぱり自分も昭和ノスタルジーに興味のあるひとりなんだとあらためて実感。

あとがきに記されていたが、当時の空気感やノリが詰まっている雑誌を本書執筆のためのよりどころとして、多くの雑誌を見たそうだ。

現代は、それに代わるものが見つからないというが、たしかにその通りだ。

先述したとおり、”平成“や”令和“がノスタルジーの対象になることはなさそうだが、振り返ることすらできなくなると思うと、それはそれでちょっと複雑な気分になる。

Posted by ろん