体罰はなぜなくならないのか (幻冬舎新書)/藤井 誠二

- 体罰はなぜなくならないのか (幻冬舎新書)
- 藤井 誠二
- 幻冬舎 2013-07-28
- by G-Tools , 2013/12/11
本書は、体罰に関する、多くの事例を取り上げ、体罰がなかなかなくならない背景を探っていく。
体罰は、僕も以前から気になっている問題のひとつだ。
大阪の事件は、今年はじめ大きな話題になったし、このブログでも大きな反響があったことは記憶に新しい。
本書のタイトルにあるように、体罰はなぜなくならないのだろうか?
その原因として、体罰を容認する人が決して少なくない…ということが挙げられていた。
「ある程度の体罰はやむを得ない」
「言って聞かないのなら身体で覚えさせることが必要」
ドキッとした。
僕もそう思っていたからだ。
そして、そういった体罰を容認する考えとあわせ、体罰による事件が、マスコミなどで大きく取り上げられるようになると、その地域や自分たちが否定されたと考えるという。
平穏な暮らしが脅かされたと考える。
その矛先は、被害者に向かう。被害者が事を荒立てなければ、まるく収まるのだ。
被害者はさらに追いつめられていく。それと同時に、体罰も温存されていく。
もともと体罰が、閉鎖的な環境下で行われるため、発覚しにくく、また、発覚しても処分が甘いことが指摘されている。
甘い処分から体罰を繰り返す事例も本書ではいくつも紹介されている。
対策としては、各教育委員会で「体罰防止マニュアル」が作られているが、本書では「自分の子どもに万一のことが起こったらどうしたらいいか?」という視点が欠けていると指摘。
実際、問題が起きても、その調査は、統一的に定まったルールがあるわけではなく、各教育委員会に任されている状況で、どういった組織が、どういった方法で調査し、どういった報告書をまとめるのか?といったフローが定まっているところはなさそうだ。
本書では、強力な権限のある第三者機関を設置するべきと提言しているが、これには僕も全面的に賛成だ。
狭い社会では利害関係者が近く、発言力の強い人たちからの影響も小さくないことから、地域の中で隠蔽される傾向があるからだ。
でも、体罰をきっかけとした悲劇をなくすために、もっとも大事なことは、やはり、体罰を容認する考えを、今一度見直しているということのような気がしてきた。
「良い体罰?」と「悪い体罰?」・・・自分の中で、分けて考えようと思ったが、違和感が残ってしまう。
これまで、体罰はやむを得ないと考えてきたけど、そこに明確な線引きができない以上、「体罰全面禁止」くらい踏み込まないと、体罰はなくならないのでは…そんな気がしてきた。