新幹線お掃除の天使たち 「世界一の現場力」はどう生まれたか?/遠藤 功

■経済・ビジネス, 龍的図書館

先日読んだ「督促OL」同様、この本も、またまた“仕事”というものについて、考えさせられる内容だった。

本書は、東京駅を折り返す新幹線で清掃作業を行っている会社のお話。

舞台は、東北・山形・秋田・上越・長野の各新幹線が発着する、東京駅20番線~23番線ホーム。

ここに到着し折り返す新幹線を清掃するのが、JR東日本の関連会社である鉄道整備=テッセイ(現在は、JR東日本テクノハートTESSEI)のみなさんだ。

清掃するのは、一日110本、車両数1300両。平均作業時間は、1列車7分という。連休などの繁忙期には、一日160本にも達する。

とにかく時間との勝負。当然作業は列車の発着する早朝から深夜まで、作業自体は車内だけど、出たり入ったりで、屋外との気温差も相当身体に堪えそうだ。

決して、誰にでも好かれるものではない清掃という仕事を、組織の力で、魅力的なものに変え、日本はもちろん海外からも注目を集めている。

なんだか前置きが長くなってしまったが、ここに至るまでの道のりは、決して平坦ではなかった。

前述の通り、列車の清掃をする会社なのだから、いかにきちんと掃除をするか?を考えればいいのだけど、単に「綺麗に掃除すればいい」だけでは、限界が来る。

実際、スタッフの定着もあまりよくないし、雰囲気も決して良いものではなかったという。

ただでさえ、筆舌しがたい汚れに立ち向かい、わずかの時間の中で綺麗に掃除をして列車を送り出さねばならないという過酷な労働環境において、どこにモチベーションを見出すか?

この会社は、自分たちにしかできないこと、オリジナリティを見つけることで活路を見出す。

ホームやコンコースを案内する「コメット/スーパーバイザー」というチームを作ることになったとき、「なぜ清掃の会社なのに、そんなことまでしなければならないのか」と、あからさまに口にする人や、「若い女性コメットのところに鼻の下を伸ばして日参している」と揶揄する人まで現れる始末。

駅長との情報交換やメディアでの紹介などを通じて、日陰の存在と思っていたテッセイという会社が変化していくのを目の当たりにすることで、スタッフの意識も変わっていく。

「現場こそが主役であり、価値を生み出す源泉だ」

経営陣の考えに、スタッフも徐々に応えていく。

働きやすい職場環境作り、一体感を高めるイベントの開催、小集団活動、提案活動のテコ入れなどなどを通じて、ゆっくりと、でも確実に、意識が変わっていく。

印象的だったのが、スタッフのこの言葉だった。

私はこの会社に入るとき、プライドを捨てました。でも、この会社に入って、新しいプライドを得たんです。(p.43)

仕事に対して、しっかりとしたモチベーションを持ち、周囲からの感謝の言葉や信頼が得られるようになると、最高のパフォーマンスを発揮するということがよく分かった。

これって、どこかで見たことがあるな…と思ったら、先日読んだ、アポロ計画の話と、実はまったく同じだった。

時代も、人種も越えて、普遍的なことなんだというのは、とても興味深かった。

Posted by ろん