だましの手口/西田 公昭

■社会・政治・事件,龍的図書館

だましの手口 (PHP新書)
西田 公昭

PHP研究所

振り込め(オレオレ)詐欺、霊感商法、還付金詐欺などなど…詐欺事件は、関連するニュースを見聞きしない日はないと思えるくらい、非常に多い犯罪だ。

なんで騙されるんだろう? どういった手口で騙されるんだろうと思いながら、読んでみた。

まず、覚えておかねばならないのは、ニュースで取り上げられる以上に、実はおびただしい数の詐欺事件が起きているということだ。

騙されたというイヤな出来事は他人に話したがらないということや、そもそも誰にも相談できずにいる人が相当数いるようだ。

でも、さすがに、あまりに合理的ではないことに対しては、だまされないという自信はある。

もっとも、こういう人が危ないと本書でも指摘していたが・・・読んでいて、ハッとしたのは、本書の中で、悪徳営業マンが、言葉巧みに先物取引を勧めるトーク例を紹介しているところだ。

だましているとわかって読んでいても、なんとなくリアリティを感じさせる内容だった。

一瞬、ちょっと検討してもいいかも・・・という気になってしまった。

冷静になってみれば、おかしいと思うことを、なぜ、そんなふうに思ったのか、自分なりに考えてみた。

おそらく、「会話にしっかりとした数字とその裏づけがちりばめられていた」ということのようだ。

先述したように、「合理的ではないこと」に対しては、だまされないが、逆に、「合理的なこと」ならだまされる可能性があるということだ。

だまされないという自信は、このように脆いものだと思い知らされた気分。

たとえば、ある面談を取り付けた悪徳営業マンが、約束の時間にわざと遅れてやってくる。

待たされたほうは、せっかく待ったんだから、このまま帰るのも意味がないから、ちょっとでも話を聞くだけでもいいだろうという気になる。

相手の話を聞くということだけでも、実はすでに相手の術中にはまっているというのだ。

つまり「待つ」という時間を先行投資したことであり、これを無駄にしたくないという心理が働くという。無意識のうちに相手の立場を肯定し、話を聞く羽目になる。聞けば、さらに自分の行動を正当化するため、相手の評価を高め、自分は「得になる」、あるいは「大変貴重な体験をした」と思うようになるという。

面談が成功した段階で、営業マンはほとんど契約が取れると自信を抱くらしい。

あぁ危険!

数多くの人たちがだまされるのには、理由があるのだ。

地震や火災のような天災はきっと来ると予期して訓練しているのと同様に、だましや詐欺に対しても、訓練をしておくことを著者は勧めている。

だまそうとする連中は、本当にしつこい。

もうずいぶん昔のことだが、投資を勧める業者にしつこく電話攻撃を受けたことがある。

あまりにしつこいので、同僚に思い切ってこう言ってもらった

「亡くなりました」

その後、事情を知らない他部署に電話を掛けられ、「◯◯さんいらっしゃいますか?」と言って、電話を回されてしまったのだ。

だまされないように、みんなで注意したい。

Posted by ろん