2836 犬島アートプロジェクト

建築・都市,芸術・デザイン

まだ、直島をほとんど見てもいないのに、翌朝は、いきなり別の島に渡る。

直島に行くにあたって、いろいろ調べたときに初めて知った。ここでは、犬島アートプロジェクト「精錬所」という企画を行っているそうで、約100年ほど前に作られた銅の精錬所やアート作品など、興味深い展示があるとのことで、これは行かねば…と。

宿泊したベネッセハウスから、犬島行きのシャトル便が出航する宮之浦港までは、バスで送ってもらう。

直島から犬島まで35分。

運賃は1人2000円…なんと2000円! 往復だと4000円もするのだ。他に手段がないのだから、仕方がないけど。

定刻通り、犬島に到着。桟橋の目の前に、チケットセンターやショップのある建物がある。

鑑賞料は、1人1000円。

1組10人弱くらいで、A組とB組の2組に分かれて見学することになった。

僕らはA班で、案内してくれるのは、地元で生まれ育ったおばあさんだった。

まずは、アート作品やそれらを展示する建築を紹介してもらう。

三島由紀夫をオマージュした作品が多く収められている。案内してくれた、そのおばあさんは、おそらくは文学少女だったようで、若いうちから彼の作品をよく読んでいたそうだ。

三島由紀夫と言えば、壮絶な最期を遂げたことで知られ、おばあさんも、「彼の気持ちがわからない」と言いながらも、現代社会…特に若い人たちに対する批判なども交え、興味深い解説をしてもらうことができた。

このおばあさん、正確な年齢は忘れてしまったが、75歳くらいだったはずだが、滑舌もしっかりしていたし、なにより、話がうまく、自身の経験を踏まえた解説は、とても楽しかった。

アート作品が展示されている建物は、目立たないように作られているため、写真で取ることはできないし、また作品自体も、撮影禁止であるため、ほとんど紹介できないのが残念。

ひととおり、作品を紹介してもらったあとは、いよいよ産業遺産である精錬所を案内してもらう。

犬島に到着したときも、あまり天気は良くなかったが、時間が経つに連れて、雨と風がどんどんと強くなって、ついには借りた傘が壊れてしまった。

銅を精錬した際に発生した副産物(スラグ)を元に作られた、おびただしい量のカラミ煉瓦に圧倒される。視界に入る全ての構造物が、そのカラミ煉瓦でできている。壁のようになっているカラミ煉瓦が、まるで迷路のように雰囲気になっていた。

カラミ煉瓦は、ふつうの煉瓦と比べてかなり大きく、鉄が含まれているせいかかなり重いそうだ。その色と相まって、見るからに重厚感がある。

とにかく、あちこちに放置されていた。

おばあさんは、アーチ状になったこの場所で、おままごとをしていたという話をしてくれた。方言を使っちゃいけないというルールで遊んだそうで、いわば“セレブおままごと”みたいな感じ?

煉瓦の崩れ方が、まるで、爆撃を受けたかのような状態。100年近くも放置されていると、こんな状態になってしまうのか?

発電所跡はドイツの技術を取り入れたとのことで、他の建物とは違った雰囲気。

ひどい天気だったが、こういうときに、こんな場所を見るのも、なんだか悪くないような気もしてきた。きっと天気のいいときにきたら、また全然違った印象を持つことだろう。

寒さを我慢しながら、今朝出発したチケットセンターに、大急ぎで戻って、昼食を取ることにする。

Posted by ろん