やんごとなき読者/Alan Bennett

■文学・評論,龍的図書館

4560092257 やんごとなき読者
Alan Bennett 市川 恵里
白水社 2009-03
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日本で本当に“やんごとない人”と言えば、皇族くらいしか思いつかないが、本書のタイトルになっている、やんごとない読者とは、イギリスでのやんごとない人代表、エリザベス2世(エリザベス女王)を指している。

ある日、ウィンザー城にやってきた移動図書館を、偶然エリザベス女王が見つけたことがきっかけで、突然読書に目覚める。そして、熱中のあまり、公務にも支障を来すようになる。

困るのは、彼女を支える秘書や侍従たちで、あらゆる手段を使って、読書を止めさせようとする。もちろん、これはフィクションなのだけれど、皇族の実名を出してしまうなんて、皇族や王族に対する考え方が日本とはまるで違うことがわかる。

本書の中で一番気に入ったのはここ。

読書の魅力とは、分け隔てをしない点にあるのではないかと女王は考えた。文学はどこか高尚なところがある。本は読者が誰であるかも、人がそれを読むかどうかも気にしない。すべての読者は、彼女も含めて平等である。文学とはひとつの共和国なのだと彼女は思った。(p.40)

なるほど、そう考えると、読書ってすごいことのように思えてくる。新しい発見をしたような気がした。

ただ、外国で書かれた本に共通するのは、外国人の名前が覚えられずに、誰が誰だかわからなくなってしまうという問題がある。僕だけかもしれないけど。それに日本にない独特の捻りや言い回しなどが、読み進めていく中で引っかかってしまうのは、まだまだ読書量が足りないからだろうか?