7939 静かな夏

今年の夏、ふと耳を澄ませてみると、セミの声がやけに少ない気がする。
比べたわけでもないし、根拠があるわけでもないのに、そう感じてしまう。
木々の多い公園に行けば、もちろんセミの大合唱は聞こえてくる。
けれども、あの身体全体を包み込むような圧倒的な鳴き声ではなく、ところどころから響く散発的な声にすぎない。空気の隙間が目立つような、そんな鳴き方だ。
セミの鳴き声は、まるで彼らが夏を謳歌しているかのようで、かつてはうるさいとすら感じていた。
しかし、今では、その喧騒がどこか懐かしく思えてしまう。
これから先、あの声を耳にする機会は、徐々に減っていくのだろうか。
もし本当に数が減っているのだとしたら、雨の少なさや続く高温のせいなのだろう。
そして気づくのは、こうした異変を「異常気象」と呼ぶことすら少なくなっていること。
いつの間にか、異常が日常に溶け込んでいって、”静かな夏”が、ふつうに感じられるようになってくるのかもしれない。