検証 能登半島地震/日経クロステック,日経アーキテクチュア,日経コンストラクション
- 検証 能登半島地震 首都直下・南海トラフ 巨大地震が今起こったら
- 日経クロステック,日経アーキテクチュア,日経コンストラクション
- 日経BP (2024/4/4)
今年の元日に発生した能登半島地震は、巨大地震のもたらす影響をあらためて見せつけられた。
2016年4月 熊本地震、2018年9月北海道胆振東部地震など大きな地震はあったが、津波や関連した大規模な火災などによる大きな被害が出た地震となると、2011年3月東日本大震災を思い起こさせる。
東日本大震災でもさまざまな想定外のできごとがあり、それらを生かして対策が行われてきたはずだが、今回の能登半島地震においても、やっぱり想定外がいくつもあったようだ。
巨大地震への対策は本当に難しいものだということを見せつけられた。
本書は、デジタルメディア「日経クロステック」建築専門誌「日経アーキテクチュア」、土木専門誌「日経コンストラクション」で伝えられてきた能登半島地震についての記事をまとめたものだ。
かなり専門的な内容も多かったが、非常に興味深いことが書かれていた。
身近でも大きな影響があり、自分自身もいろいろと経験したことから、どうしても東日本大震災と比較してしまうのだが、被災範囲は能登半島に集中しているわりには、復旧に時間が掛かっている印象があった。
しかし、本書でも詳しく紹介していたが、復旧に時間が掛かってしまっている理由は、能登半島という地域の特性、地震の直接的な被害の違いによるもののようだ。
まず、能登半島は山地が多く直下型地震によって道路構造物の被害が大きかったことが、道路啓開(復旧)に時間がかかった大きな原因のひとつ。
東日本大震災では、津波の被害は大きかったが、実は内陸の幹線道路の被害が軽微だった。
能登半島地震では、土砂災害の影響を受けやすく、道路の陥没などの埋め戻しに時間がかかったという。
また、東日本大震災ではあまり見られなかった、海底の隆起による漁港の崩壊も深刻だ。
実に4mも隆起したことで漁港としての機能が完全に失われてしまったことなんて、これまで聞いたことがない。
しかも能登半島の多くの漁港がそのような状況となってしまっている。
また通信インフラについても詳しく紹介されていたが、こちらも東日本大震災から学んだノウハウを生かすことができた面もあれば、これまで経験したことがない想定外の事態となったことも多かったようだ。
まずは、前述の道路啓開にかかわることだ。
自衛隊が道路啓開のために誤って通信設備ごと取り除いてしまったり、日本海が荒れに荒れたことで船上基地局での環境がひどく船長ですら船酔いするほどだったこと、ドローンによる基地局には飛行時間帯に制限があったこと、停電と断線が同時に発生したために異常の内容を正確に把握できなかったことなどが挙げられていた。
こうしたことも、次の震災に向けての大きな教訓となるはずだ。
本書後半では、次の巨大地震に向けてのさまざまな取り組み、東日本大震災から10年が経った現地の状況を取り上げている。
震災対策にはゴールがないし、そうこうしているうちに、新しい震災が起きてしまう。
直近では、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されて、地震に対する不安が、ますます高まっている。
こんな感じだと本当に気が遠くなってきてしまうが、この日本で暮らしていく限り、決して逃れられることではないのだから、できることを少しずつこなしていくしかないのだ。