実録 新幹線検修/渡邊 健志

■鉄道,龍的図書館

品川駅南東の品川インターシティがある場所は、かつて東海道新幹線の東京第一運転所があって、さまざまな検査・修繕業務が行われていた。

本書は、ここで長く勤務してきた経験を紹介していて、外部からはけっして知ることのできない貴重な話題が盛りだくさんだった。

筆者は根っからの”鉄ちゃん”(鉄道ファン)。

そんな人が現場の最前線にいたのだから、一般の人たちがまずお目にかかれない写真や情報がふんだんに乗り込まれている。

そういった意味で、”公私混同”が甚だしいのだけど、今と違って、当時はあまり問題にはならない時代だった。

本書で全体を通して感じたのは、すべてが、どこかおおらかで、かなり部分において現場の裁量に任されていたことだ。

こだま号では、長らく運転士以外に検査専門の係員が乗車していたことや、職員は、自分の判断で新幹線の営業中の線路に降りてもよいことなど、いまとなっては、”考えられない”ことも多かった。

911形ディーゼル機関車(2001年8月5日)
911形(2001年8月5日)

現在の感覚で言えば”無駄が多い”のだが、その分、たくさんの人に支えられていたこともわかる。

お召列車の整備や、「世界最速のディーゼル機関車」と言われた911形など、とても興味深いエピーソードを知ることができる。

911形は、イベントで直接見たことがあるが、解体されてしまった今となっては、もっとちゃんと見ておけばよかったと思う。

そのときの何気ない風景や時代の空気というものは、いつの間にか、ガラッと変わってしまうのだと実感させられる。

Posted by ろん