8130 どうぞ、どうぞの文化

エレベーターに数人で乗り合わせ、1階に到着したとき。扉が開いた瞬間に生まれる、あの独特の「間」がいつも気になる。
扉のすぐ側にいる人は、ごく自然に「開」ボタンを押して待機する。
そして、奥にいる他の人たちは、すぐには動こうとしない。
それは決して降り忘れているわけではなく、むしろ「自分より先に、他の人に降りてもらおう」という、無言の譲り合いが行われているからだ。
いわば「どうぞどうぞ」の文化。
我先に降りるなんてもってのほか、という空気がその狭い空間を支配している。
ふと思う。これは日本だけの文化なのだろうか。
効率だけを考えれば、出口に近い人から順に降りるのが一番スムーズなはずだ。
しかし、効率よりも「配慮の姿勢」を示すことを優先してしまう場面に多く出くわす。
ボタンを押し続ける人の指先と、それに応えて会釈しながら降りていく人たちの背中。
あのわずかな沈黙の中に、日本独特の文化が凝縮されているのかなと思うと、とても興味深い。