ロケットサバイバル2030/松浦晋也

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ロケットサバイバル2030/松浦晋也

ロケットサバイバル2030
松浦晋也
日経BP(2024/12/20)

国産H3ロケットは、日本の基幹ロケットだが、打ち上げ成功に至るまでは、大変な紆余曲折があった。

世界の競合するロケットの進化もすごい。

逆噴射で戻ってくるロケットを見ると、なんだか日本が取り残された感もあった。

本書は、現在の日本のロケットを取り巻く状況について、最新情報を紹介している。

多少難しいところもあるが、いままで知らなかったことや、興味深い話がたくさん載っていて、けっこうあっという間に読めた。

「使い捨て型」と「回収・再利用型」について

ロケットには、「使い捨て型」と「回収・再利用型」がある。

前述のような、戻ってくるロケットは技術が進んでいる一方で、使い捨てタイプも多い。

なぜ、それぞれが共存するんだろう…単に技術の差なのかと思ったらそういうわけでもなかった。

打ち上げの頻度にもよるらしい。頻度が高まれば、後者の方のメリットが大きいようだ。

たとえば、スターリンクのように自分で自分の需要を作るような…初期段階で4000機超、将来的には1万2000機以上も打ち上げるというのだから、もう何桁も違う世界だ。

 

アビオニクス(電子機器)について

アビオニクス(電子機器)という言葉は初めて聞いた。

これまでのロケットは、個々の機器はそれぞれケーブルで直接結線されていた。

これをH3ではネットワーク化したそうだ。

重いワイヤーハーネスをネットワークケーブル1本にすることができる。

従来、ロケットの発射場において、ロケットから外部にそれぞれのケーブルを引き出す必要があったが、ネットワークケーブルになることで、それが1本にまとまることで省力化や、トラブルを減らすことも期待できる。

冗長構成について

ロケットはすべて二重化する冗長設計になっていると思ってたが、意外なことに、ロケットについてはそういった対応はしていないそうだ。

もちろん、宇宙機(宇宙船)では冗長化して主系統に問題があった場合は、予備系統に動作を切り替えるということは基本的に行われている。

しかし、宇宙船を運ぶロケットについては、動作時間が数分程度と短く、トラブルが発生した場合は短時間のうちに破壊的な事態につながるから、切り替えるというような時間がない。

H3では、噴射時間の長い2段目のロケットにおいて冗長設計を導入したそうだ。

この背景には自動車部品の積極的な採用によるコストダウンがある。

H3は、前述のとおりアビオニクスでは、ほとんどの部品を自動車用電子部品とした。実に90%が自動車用部品だそうだ。

宇宙機用部品と比べれば圧倒的にコストが下げられるのはいうまでもない。

 

本書の後半では、「日経クロステック」と「日経ものづくり」で掲載したH3開発に関する記事が紹介されている。

2023年3月には、H3ロケット1号機が打ち上げに失敗していて、それについては自分も取り上げている。

当分開発が止まってしまうんじゃないかと思っていたが、わずか半年ほどで原因を特定して、1年も経たずに2号機の打ち上げに成功している。

絶対に成功させるという執念みたいなものを感じた。

ただ、H3を取り巻く世界はどんどんと変わり、回収・再利用型の研究、種子島宇宙センターの老朽化など、いろいろと課題も多いこともわかる。

そして…

この本を読んだあとに起きた衝撃的な事故…昨年12月にH3ロケット8号機が打ち上げに失敗してしまった。

この失敗をなんとか乗り越えてほしいと願っている。

Posted by ろん