7953 「やった感」で満足させていないか

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「持続可能な航空燃料」(SAF、サフ)に関連したニュースを、ときどき耳にする。

たとえば最近の話題。

家庭から出る廃油で飛行機を飛ばそう——。使用済み食用油を原料とするSAFの利用拡大を目指し、東京都と連携する区市町村が回収キャンペーンを展開している。都庁舎(新宿区)をはじめ都内約80カ所に回収所を設け、調理後に残った油の持ち込みを呼びかけているという(東京新聞記事)。

取り組み自体は意義深いと思う。しかし、ニュースを聞くたびに「本当にどれだけ役立つのか」と首を傾げてしまう。あれほどの燃料を消費する航空機に、家庭で使い終えたサラダ油程度がどれほど寄与するのか——疑念は拭えない。

そこで、ChatGPTに手伝ってもらって、実際のデータを調べてみた。

日本の廃食用油(UCO)の発生量
全油連のフロー図(令和3年度版)より)
事業系≈40万トン/年・家庭系≈10万トン/年 → 合計≈50万トン/年
→ うち回収・処理は≈「38万トン/年」

日本のジェット燃料“国内向販売量”(需要の近似)
経産省「資源・エネルギー統計年報(令和6年)より)
国内向販売=4,314,571 kL。重量の密度0.8t/kL換算で「約345万トン/年」

航空機の燃料消費量は莫大だ
航空機の燃料消費量は莫大だ

つまり・・・単純に比較すればこうなる。
• 家庭系廃油:10万トン/年
• ジェット燃料需要:約345万トン/年

仮に家庭で出る油が「すべて」回収されてSAFになったとしても、需要の3%弱にしか満たない。

理屈上の最大値でさえこの程度だ。

こうした現実を思うと、いくつかの懸念が浮かぶ。

  1. 「やった感」で満足してしまうリスク
    実際には航空燃料のごく一部しか賄えないのに、「自分の廃油で飛行機が飛んでいる!」と過大に評価してしまうと、本質を見誤る。
  2. コストと効率の問題
    家庭から少量ずつ油を集める仕組みは、輸送や集荷にコストがかかり、場合によってはCO₂排出を増やしてしまう。効率性への意識が薄れてしまう危うさがある。
  3. 情報の伝え方の問題
    自治体やメディアが「参加型エコ活動」として紹介する際、こうした量的な限界を伝えないのは不親切。事実を隠すことで、かえって社会の取り組み全体を軽く見せてしまう可能性すらある。

もちろん、一般市民が環境問題に参加する意識を持つことは大切だ。

家庭廃油の回収は、象徴的な意味や教育的効果を持つ活動であることも間違いない。

ただ、その意義に目を奪われて「本当にどこまで寄与できるのか」という本質を見失っては元も子もない。

数字が示す現実と理想のバランスを、もっと正直に、もっと丁寧に伝えるべきではないだろうか。

Posted by ろん