福田 洋、石川 保昌/著
河出書房新社
1,680円(税込)
殺人事件は発生したり容疑者が逮捕されたりするときには事細か伝えられるものの、その後の経過やその全体像を俯瞰する機会は滅多にない。また事件の名前はどこかで聞いたことがあるものの、その内容や背景などを知る機会もなかなかない。この本は、、事件を伝える当時の写真とともにその事件の全貌と時代背景などを、事件ごとに見開き一ページで紹介していくもので、とてもわかりやすい。当然のことだが殺人事件は残忍なものが少なくなく、どうしてここまでひどいことができるのだろう…と読んでいるうちに思わず背筋が凍るものもあった。こうした事件を振り返ることで、新たな悲劇を防ぐ手だてになれば…と思わずにはいられない。ちなみに本書刊行以降の裁判結果など補足し、99年以後の9事件が増補された増補改訂版があるらしい。(4309760139)
(2004/11/01) 【★★★★☆】 −04/11/14更新
|
|
岩下 久美子/著
小学館
1,785円(税込)
ストーカーという言葉が、”日本語”になったのは、いつくらいだっただろうか?本書にも書かれているが、この言葉が日本で認知されるようになった頃は、何でもかんでも「ストーカー」という言葉があふれ、まるで流行語のような使われ方をしていたように記憶している。ストーカーの被害にあった側と、ストーカーとなってしまった側の立場から、その具体的な行動や思いをたどることで、こういった問題がごくごく身近なところで起きる可能性があるのだと実感させられる。
1991年に放送された「101回目のプロポーズ」の武田鉄矢や、映画「卒業」の結婚式のその場に花嫁を略奪しに来るシーンなんてのも、一歩間違えればストーカー的思考で、「諦めずに追いかければ必ず思いは遂げられる」という誤った幻想を植え付けてしまったメディアの弊害は小さくない。ただこれは「本当に人の嫌がることはしない」という、基本的なモラルがあるという前提の上で成り立っているはずで、単純に自分のやりたいことであれば、他人に迷惑を掛けることは仕方がないということとは全く違うはずだ。「コミュニケーション能力の低下」「傷つきたくない症候群」「孤独恐怖」というキーワードがストーカーを語る上で重要らしい。「ストーカー」に関して、まずその全貌を知るには最適の本だと思う。
(2004/11/01) 【★★★★☆】 −04/11/14更新
|