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2月2005年3月4月
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2005年3月


趣都の誕生 萌える都市アキハバラ

森川 嘉一郎/著
幻冬舎

1,575円(税込)
 秋葉原の雰囲気が変わってきたと感じるようになったのは、ごく最近のことだ。それもあらためて思い返してみると…と言ったレベルである。
 かつて高校時代には電子部品を買うため、何度も足を運んでいたが、大学進学以降は足が遠のいていた。その後、仕事柄、秋葉原が無縁の街ではなくなったこともあり、行く機会は増えた。秋葉原の変化を感じる機会は少なくなかったはずなのだが、アニメキャラクターで覆われてきたという違和感はなかった。それだけオタク趣味のアニメキャラクターと秋葉原の親和性が高いと言えるのかもしれない。
 本書は「東京」「都市」「建築」「航空機」から、はては「オウム真理教」に見られたサティアンに至るまで、さまざまな切り口で、世界的にも類を見ない趣味が露出した都市”趣都アキハバラ”誕生の背景を解説している。著者の見識の幅の広さに驚く。
 口絵の写真では、秋葉原とその他の都市と比較することで、その特異性を明らかにしている。
 人格が偏在(秋葉原と渋谷で、それぞれ撮った写真に写った人たちの雰囲気…体型!が最初から決定的に異なる)、建物の壁がどんどん透明化するのが渋谷で、窓がどんどんふさがれ不透明化するのが秋葉原、ブランド品や外国人の広告が並び海外指向なのが渋谷で、あくまでもメイドインジャパン指向なのが秋葉原…などなど、とても興味深い考察が並ぶ。
 アキハバラとオタクを通して、都市とは何なのか?を考える。
(2005/3/27) 【★★★★★】 −05/3/27更新


男女七人ネット心中―マリアはなぜ死んだのか

渋井 哲也/著
新紀元社

1,470円(税込)
  インターネットを使って知り合った人たちが心中する、いわゆる「ネット心中」がたびたび報道されている。
 報道の中で「簡単に死を選んでいる」みたいな論調も見られることがある。確かに第三者から見れば「もっと考えて行動するべきだった」と思えてしまうだろうけれど、ネット心中を選択した彼らは、決して簡単に死を選んでなんかいない。
 本書では、ネット心中にかかわる、さまざまなケースを紹介しているが、いずれも当事者は相当悩み、苦しんでいる。このつらさは本人しかわからない。周囲は想像することしかできないから、これまた相当もどかしく悩むことになる。
 インターネットが悪いと決めつけるのは簡単だけど、それで解決するわけないなんて、まぁたいていの人は思うでしょう。本書でも触れられているけど、逆にインターネットで救われる人も少なくないわけで、そういった面も考慮されるべきだろう。
 この本を書くきっかけとなったネット心中において、交流のあった”マリア”の死を選んだ理由が最後までわからないと告白する著者の苦悩も感じ取れる。

 取材の中で、ネット心中をした人たちのほとんどが、精神医療を受けていたという。つまり周囲へのサインを出していたということであり、突発的に心中に至ったわけではないということだ。そうなると、ますます何とかしてあげられなかったかという思いに駆られてくる。

(2005/3/27) 【★★★☆☆】 −05/3/27更新



大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか

高木 徹/著
文藝春秋

1,650円(税込)
  この本を読むまで、アフガニスタンのバーミヤン遺跡にあった大仏のことなど、自分も含めて忘れかけていた。世界の一般的な世論だって同じようなものだと思う。特にアメリカの同時多発テロ以降は一層そちらの方に目が向いてしまった。
 しかし、このテロの原点は、バーミヤン遺跡の大仏破壊にあったと言っても過言ではないことがよくわかる。
 一時期アフガニスタンが注目されたとき、「タリバン」とか「アルカイダ」という言葉を見聞きしたから、聞き慣れてはいるけれど、一体それらがなんなのかわかっている人はそう多くなかったと思う。もともとNHKの番組のための取材が元になっていることもあって、ちょっと取っつきにくいアフガニスタン情勢がとてもわかりやすく書かれている。

 タリバンが最初から、世界を敵に回すような存在ではなく、崇高な理念を持った集団で
あったこと、徐々に変質しつつあったタリバンの中にあっても、なんとか軌道修正しようと努力した人たちがいること、オサマ・ビンラディンのしたたかさはただならぬものであること、大仏を破壊から守ろうと尽力した日本人外交官がいたこと…

 大仏が破壊されるまでの経過を追っていくうちに、一気に読んでしまえる感じの本だった。これまであまり関心のなかった地域だったが、読み終えると身近に感じられるようになってきた。
(2005/3/27) 【★★★★☆】 −05/3/27更新



〈図説〉私鉄全史   金かえせ!
原口 隆行、 所澤 秀樹、三宅 俊彦/著
学研

1,895円(税込)
  わが国の鉄道を「私鉄」という観点からまとめた解説本。カラーページも多く読みやすい。
 
 最近西武鉄道の堤義明前会長のワンマンぶりが、改めて取り上げられているが、このそもそもの背景を考えるとき「私鉄史」抜きには語れない。私鉄創業者は、経営的にも人間的にもかなり個性的な人が多い。東武の根津嘉一郎、西武の堤康次郎、阪急の小林一三、東急の五島慶太…いずれも、ライブドアの堀江社長もびっくりするほど?乗っ取り、買収で勢力を伸ばしてきた。
 彼らに共通していることは、いずれも政界、官界と密接に関わりを持っていたという点。最近のIT業界を見ても明らかなように、現在では政界、官界と対立するようなことはあっても、あまり関係を持つような機会がない気がする。
 話がずれたが、そんな私鉄の歴史については、巻末に人物史としてまとめて取り上げられている。

 人車鉄道(馬車の動力が馬のように、人が動力となって車を押す)や、小田急ロマンスカーの歴史、鉄道技術やこれまで名車と呼ばれた鉄道車両の紹介、電車運転士の研修風景、まもなく開通するつくばエクスプレスなど、それらの項目だけでそれぞれ一冊の本ができてしまうような話題盛りだくさん。ちょっと欲張りすぎた内容にも感じるが、ここから関心を持った項目を掘り下げて調べてみるのもおもしろいかも。そうなると、参考文献などの情報も載せて欲しくなる。
(2005/3/27) 【★★★☆☆】 −05/3/27更新
  中島 慎一/著
宝島社

1,470円(税込)
 ネットオークション詐欺との戦いの記録。
 パソコン通信時代からネット売買の経験があるけれど、これまで幸いなことにこういった詐欺に出会わずに済んでいる。
 こうしてたくさんの事例を見ると、他人事じゃない詐欺の実態がわかる。そしてその手口は、想像をはるかに超えていることに改めて驚かされる。提供する商品なんて持ち合わせていないのに架空出品し、オークションで得たお金で別の落札者のための商品購入や自身の借金返済などに充てるという、まさに破綻に向かって走る”自転車操業師”とか、犯人と疑われても平気でウソをつきまくっていく者(しかも家族ぐるみで)、すでに死亡している名義人の口座を浸かってみるなど、よくここまでできるな…と逆に感心してしまうくらい。
 ネットオークションを必要以上に怖がりすぎる必要はないと思うけど、注意を払うことに越したことはない。オークションの初心者はもちろん、回数を重ねつつある中級者にも是非読んでもらいたい。

(2005/3/27) 【★★★☆☆】 −05/3/27更新


翔べ! YS-11 世界を飛んだ日本の翼   世界を変えるお金の使い方
横倉 潤/著
小学館

1,895円(税込)
  日本の空から、純国産旅客機YS-11の引退のカウントダウンが始まっている。2006年までに日本の空から引退することもあり、YS-11に関する本が数多く出版されている。
 先日図書館で手にしたこの本は、ハードカバーの書籍ながら写真やイラストをふんだんに用いているので、ただパラパラとめくっていくだけでも楽しい。
 本文はYS-11の誕生から今日までの経緯を詳細に紹介している。若干専門的な感じがするが、航空機に関心のある人にとっては全く抵抗はないと思う。欲を言えば、もう少し現場の人の声が入っているとなお良かったと思う。
(2005/3/27) 【★★★☆☆】 −05/3/27更新
  山本 良一/著
Think the Earth Project/編集
ダイヤモンド社
1,260円(税込)

 ほんのわずかなお金でも世界を変えることができるということを具体的な金額を挙げて、わかりやすく紹介した本。世界を変えるためには、思想や行動が伴うことが第一だけれど、その前に必要なのがやはり「お金」。そのお金の使い方次第で、世界を変えることができるというのが、この本の主張。

「お金は社会のシステムであると同時に、あなたの意思であり、選択であり、それを伝える道具でもある」
「あなたのお金をきっかけに一人ひとりのアクションが積み重なれば、大きな変化を起こすことができる」

 たとえば、わずか100円でポリオ(小児マヒ)からミャンマーの子供5人を守ることができるらしいし、3000円あればでイラクの難民キャンプで暮らす一世帯分の灯油が買えるらしい。でもこういうことを聞いてしまうと、ほんの少しのどが渇いたからといって自動販売機に手が伸びたり、完全にどうでもいいような趣味にお金を出したりすること自体、躊躇われてしまうのは、僕だけだろうか。実態を知らなければ、何も始まらないのだけれど、知ってしまうと自分の生き方が萎縮してしまうのは、本末転倒なんだろうけれど…。あまり考えすぎないようにしよう…。
 小さい額ばかりでなく、1兆2000億円の使い道なんてのもあった。この金額で、教育の機会を与えられていない世界中の子供たち全員が、初等教育を受けられるらしい。なかなか大きな金額だなと思っていたら、これが世界の軍事費のわずか4日分に過ぎないというのだから驚きだ。
 塵も積もれば山となる…じゃないけど、世界中でほんの少しの思いが集まれば、たくさんのことが解決するんじゃないかと、ちょっと希望も見えてくる。

(2005/3/27) 【★★★☆☆】 −05/3/27更新