8311 ハイパー電子手帳

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実家で、かなり懐かしいものを見つけた。

スマートフォンの先祖とも言える、当時の技術の粋を集め”進化し切った”電子手帳とも言っても過言ではないシャープの「PA-9700」だ。

ハイパー電子手帳PA-9700
ハイパー電子手帳PA-9700

本体には「ハイパー電子手帳」や「256KB」といった文字が刻まれており、当時はその響きだけで未来を感じて輝いて見えたものだった。

当時の仕様や発売時期を思い起こすために少し調べてみると、現代の基準から見れば驚くほど貧弱なスペックであることがわかる。

画面は、きわめて解像度の低いモノクロ液晶だし、処理速度は致命的なほどに遅く、当然ながら本体だけでは通信すらできない。

当時は「大容量」だと誇らしげに掲げられていた256KBというメモリ容量も、今となってはスマートフォンで撮る写真1枚すら保存できないほどのサイズだ。

しかし、当時のガジェット好きたちのコメントや関連記事を読んでいると、不思議と今でも胸が高揚してくる。

限られたスペックと制約だらけの環境の中で「いったい何ができるのか」「どう使いこなすか」と試行錯誤していた当時の情熱が、鮮やかによみがえってくるからだろう。

そこでふと、ひとつの疑問が頭をよぎった。

当時の電子手帳はターゲット層ごとに多様なラインナップが用意されており、この「PA-9700」は主にビジネスパーソン向けとして機能を充実させたモデルだったはずだ。

だが、これが発売された当時、自分はまだ社会人になる前の学生だった。

いったい自分は、このビジネス仕様の電子手帳を手に入れて、何に使おうとしていたのだろうか。

すでに本体は故障しており、電源を入れても起動することはない。

もう二度と開くことのない小さな液晶画面の奥に、どんなスケジュールやデータ、あるいはメモが残していたのだろう。

液晶にはうっすらひび割れも見え、経年劣化で二度と起動することのない電子手帳を手にしながら、何十年も前の自分自身の姿と、あのころ想像していた、未来への好奇心に思いを馳せた。

Posted by ろん