8279 展覧会「アニマル&モンスター かわいい・怖い・ちょっと変」(後期)

太田記念美術館で開催中の展覧会「アニマル&モンスター かわいい・怖い・ちょっと変」の後期展を鑑賞した。
展覧会全体のテーマや骨組みに変わりはないものの、展示されているすべての作品が前期から一新されている。
身近な動物や妖怪という親しみやすいテーマのせいか、前期同様に館内は非常に多くの来場者で賑わっていて、ひとつの作品の前へと進むのにも時間がかかってしまう盛況ぶりだった。
館内は引き続き写真撮影が全面的に不可となっているため、気になった作品の幾つかをここに書き留めておく。
歌川国芳《東海道五十三対 桑名のり徳蔵の伝》(1843年~45年頃)
大晦日に船を出してはならないという忌み事を破った船乗り・徳蔵が、異形の海坊主と遭遇する場面を描いている。
海坊主から「おれが怖くないのか」と問われた徳蔵が、「世の中で生きていくことのほうがよほど恐ろしい」と淡々と返したところ、海坊主は拍子抜けしたように姿を消したという。
社会の厳しさに対する深い風刺と捉えるべきか、あるいはツッコミを入れる話なのか、観る者の解釈を試してくる実に不可思議で味のある作品だ。
歌川広重《釣り人と河童》
河童が釣りに興じる男児を背後から襲おうとした瞬間、男児が知らずに放った強烈な屁の匂いに耐えかね、鼻を押さえて退散する様子を描いている。結果として命拾いをした男児の姿にどのような道徳的教訓が見出せるかは疑問だが、人生の危機など案外こうした他愛もない偶然によって酒らえていて、今日を生き長らえているのかもしれない…と思わせる妙な説得力を感じた。
作者不詳《世直しの鯰の情》
一般的に鯰(なまず)は地震を引き起こす災厄の象徴と否定的に捉えられがちだし、自分もそう思っていたが、大地震の直後には復興事業による好景気をもたらす「世直しの神」としての側面も合わせ持っていたというのを初めて知った。
この作品では「鯰を悪く思わない者は助ける」と語りかけながら、倒壊した建物の下敷きになった人々を救出する鯰の姿が描かれている。
作者不詳《大都会無事》
地震を引き起こす大鯰を地底深くに押さえつけたとされ「要石(かなめいし)」をモチーフとした作品。
ここでは擬人化された鯰が、要石を持ち上げている。この作品の背景となった安政の大地震において、震災後の火災によって甚大な被害が出た歴史から、作中の石には「火難目(かなめ)」という文字が当てられている点が興味深い。
連日の報道の通り、先日熊本で大きな地震が発生したばかりであり、現地ではまだ余震が続いている。
そうした現実もあってか「昔のユーモラスな風刺画」として微笑ましく鑑賞するには、まだ正直なところ心が痛む。
しかし、どんなに過酷な震災見舞われたり、事故になどに打ちのめされようとも、そこからユーモアを見出し、たくましく這い上がろうとしてきた先人たちの生きる意志と祈りのようなものが伝わってくるような気もした。
人ではなくあえて動物などに置き換えるからこそ伝わるものもあるのかもしれない。