8274 異様な広告
本来、商品やサービスの広告とは、その存在を広く知らしめ、魅力を伝えることで消費者の購買や利用を促すためのものであるはずだ。
企業イメージを高め、好感を持ってもらうことが広告表現の王道であると考えるのが自然だろう。
しかし、インターネットの世界に目を向けると、そうした常識や倫理観が通用しない異様な光景を目の当たりにする。
画面をスクロールするたびに現れるのは、目にしただけで不快感や強い違和感を覚えるような広告たち。
あまりに不快なので、あえて具体的な企業名を挙げれば、明治薬品、ファーマフーズ、ハーブ健康本舗、薬院オーガニックといったあたりだ。
自社の製品がこのような不快感を煽る形で消費者の目に触れていることに対し、現場で働く従業員たちはどのような心持ちでいるのだろうかと思ってしまう。

例えば、かろうじて引用できるレベルの例として「γ-GTP高い人」というキャッチコピーと共に、縦筋の入った爪のアップ画像を提示する広告がある。
医学的に検索・確認してみても、γ-GTPの数値と爪の表面状態との間に直接的な因果関係は見出せない。
つまり、医学的根拠の提示ではなく、単にユーザーの不安を煽り、視線を強制的に止めさせるためだけに「なんだか気持ち悪い画像」をアイキャッチとして利用しているに過ぎないのだ。

また最近よく目にするインプラント治療の広告では、歯茎に金属のボルトのようなものが露骨に埋め込まれた不気味なイラストが用いられている。
歯科治療の技術的構造を示したいのかもしれないが、一見ただけで恐怖心や痛みを連想させるようなビジュアルを提示して、果たして自社サービスの魅力を伝えられていると言えるのだろうか。
爪の広告のように直接関係のない画像で吊る手法も不可解だが、売り込みたい商品そのものの恐怖イメージを前面に出す表現手法には、謎が深まるばかりだ。
だが、こうした一見すると理解に苦しむ不快な広告が一向に減らず、むしろ猛威を振るい続けているという事実こそが、ネット広告の根深い闇を物語っている気がしてならない。
どれほど好感度を損なおうとも、「目を引いてクリックさせ、一定の割合で購入に至れば勝ち」というアルゴリズムと、いわゆる”アテンション・エコノミー”(関心経済)の論理が、現実として成立してしまっているのだ。
そこには、不快感や恐怖心に反応してクリックしてしまうユーザーが一定数存在し、それが費用対効果として見合ってしまうという市場の”歪み”がある。
倫理や美意識よりも、利益が優先されるネット空間の現状と、それに適応してしまう人間の、ある種の”本能”に対し、そこはかとない恐ろしさを感じてしまう。