8265 展覧会「杉本博司 絶滅写真」

東京国立近代美術館で開催中の展覧会「杉本博司 絶滅写真」を観賞した。
まず最初の現れたのは、人類の歴史の”ジオラマ”だった。
リアルなような作り物のような、なんとも言えない独特な雰囲気を醸し出していた。

あとから解説を読んでみたことで、この作品の意味がわかった。アメリカの自然史博物館のジオラマ展示の中の作り物の動物が、一瞬、命ある本物であるかのように見えるという経験をしたそうだ。
“真実を写し出す"とされる写真を使って、逆説的に"虚像を実像として写し出す"という概念…ということのようだ。

彼の作品ですぐに思い出したのは、以前、東京都写真美術館で見た、映画一本分の上映時間中、シャッターを開きっぱなしにして撮影された作品だ。写真でありながら、映画1本分が凝縮されているのだ。
実像と虚像、過去から現在といった時間の変化までも写真にするというのはとても興味深い。

《海景》シリーズも観たことがあった。ずいぶん前だが、直島で印象的な作品だったと自分で記録している。
画面の中央に水平線を持ってくるようにして、世界各地の海を同じ構図で撮影されている。
「古代人が見ていた風景を現代人も見ることは可能か」という問いから始まったものだそう。
すべてが同じ構図なのに、どの作品も変化に富んでいるのが興味深い。
名建築がピンぼけしている写真は「優れた建築はピントが外れてボケても成立する」という考えに基づくものだそうだ。
それはたしかに真理だと思った。実際これらは遠くから見てもすぐにそれと分かったという事実からも裏付けされる。
これまでどれもモノクロばかりだったのに、《Opticks》は、珍しくカラーの作品だ。
作品近くの紹介や解説だとあまりよくわからなかったが、あとから検索してみると、これは、ニュートンのプリズムによる光のスペクトル実験に着想を得たシリーズで「光を絵の具として」表現しているという。
また、谷崎潤一郎の「陰務礼讃』に着想を得た《陰翳礼讃98-0001》は、先日の髙島野十郎の作品を思い出した。



