絶滅しそうな世界の文字/ティム・ブルックス

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絶滅しそうな世界の文字/ティム・ブルックス

絶滅しそうな世界の文字
ティム・ブルックス
河出書房新社(2025/10/28)

義務教育で学んできたはずの英語…残念ながら満足に読めないものの、文章の前後関係やわずかに知っている単語から類推すれば、なんとか意味がわかることもある。

たとえ読めなくても、見慣れたラテン文字であれば、なんとなく”あたり”がつくけど、ハングル文字やアラビア文字となってくるとまったくダメだ。

文字というのは、あまりに身近にあって、慣れた文字に囲まれていると、その大切さに気づくきっかけというのは、ふだんまったくないと言っていい。

だから、身近な文字が読めないと途端に不安になってくるのだ。

本書は、全世界からきわめて珍しい83種類の文字体系を紹介している。

タイトルに「絶滅しそうな」とあるが、紹介されているすべてがそういうわけではなさそうで、けっこうな種類の文字が、Unicodeとしての登録がある。

とにかく興味深いのは、それぞれの文字の持つ形の持つユニークさと、その文字の誕生から辿ってきた経過だ。

「アフリカ人には固有の文字がない」という蔑視に抗うために作り上げた「ンコ文字」(ギニア西アフリカ)や、なんと14歳と10歳の兄弟が考案した「アドラム文字」など、長い歴史を経て作られていった日本語の文字とはまったく違った歴史を持つ文字が次々と紹介されている。

左右対称に限りなく近い字形をしているおかげで、左から右へも右から左へも、上から下へも下から上へも、どの方向にも書ける「アヴォイウリ文字」なんてのもあった。

「トンパ文字」(中国)も「シャパ文字」(中国・チベット)も現在まで使われている数少ない象形文字と言われている。

「シャパ文字」は、なんと色で意味が変わるそうだ。

たとえば、「星と月」が黒で書かれると、「薄暗い」または「明るくない」を意味し、白で書かれると「輝いている」を意味したという。また白で書かれた「星と月」は縁起がいいものと考えられていたという。

本書の表紙に書かれている、「ソナ文字」にいたっては、もはやデザインでとても文字とは思えないほどで、いったいどうやって書いてるんだろう?と思ってしまう。

書き順ってのもあるのかな?

本書の見出しにもあったが、文字は単なる情報伝達手段ではなく、生きる証であり、文字がひとつなくなれば、何百年も書き継がれてきた、聖典、文学、手紙、法律文書、知恵、アイデンティティー、共に生きた記憶――そのすべてが失われてしまうのだ。

本書を通じて、文字を作り守ってきた人たちの思いも伝わってくる。

Posted by ろん