8183 秋葉原の雑踏と自分との対話

久々に秋葉原へ向かった。何か具体的な目的があるわけではない。
強いて言えば、街の空気に触れに「来てみた」という程度かもしれない。
滞在時間は短く、特定の店を回る余裕もなかったが、棚に乱雑に並べられたガジェットや小物を前に、自分が必要としているものは何なのかを自問自答する時間は確保できた。
以前も触れたように、買い物という行為自体があまり得意ではない。
購入という決断には、常に「この価格は妥当か」「そもそも自分に必要なものか」という自らへの問いかけと責任がともなうからだ。

しかし、秋葉原の雑多な陳列棚を眺めていると、そんな緊張が解ける気がするから不思議だ。
「これくらいの値段なら、多少の失敗も許容できるか」と思える価格設定と、自分との対話が続くこの街の雰囲気が、買い物の苦手意識を少しだけ和らげてくれる気がする。
店内で商品を探している最中、外から大きな怒声が聞こえてきた。店の外を覗くと、いかにもといった様子のオタク的な風貌の男性と、やんちゃな風な若者が口論になっていた。
どうやら身体か荷物が「ぶつかった」ことで揉めているようだ。
オタク風の男性も負けじと言い返していたが、やんちゃな若者が相手を壁に追い詰め、優位に立っているのが見て取れた。

通常であれば胸が詰まるような不穏な光景だが、秋葉原という街にいると、不思議と「日常の風景」の一部として受け止めてしまう。
もちろん、当事者にはなりたくはないが、この街が持つ独特の許容度なのだろうか。
店を出ると、一定の間隔を置いて並ぶメイドカフェの呼び込みの女の子たちや、路上に座り込む若者の姿が目に入る。
この猥雑で混沌とした空気は、近年いたるところで進む再開発によって急速に失われつつある。
秩序正しく整えられた街も便利ではあるが、こんな得体の知れない雰囲気は、やはり唯一無二のものだと感じた。