8176 消えゆく風景

先日、川越へ向かう電車から、ふと外の景色に違和感を覚えた。
以前とは明らかに何かが違う。
今朝、あらためて車窓から確かめてみると、旧マツモト電器の本社があった場所が、ついに取り壊されていたのだ。
夢か現実か判然としないほど、曖昧な記憶の中にしかない場所ではあった。
ただ、ちょっと前に紹介したばかりだったし、なんとなく残り続けるものみたいな感じがしていたので、それが突然、完全に消え去ったのだと知ると、心に穴が開いたような感覚を覚えたのだ。

さらに今日、目にしたのは、幼い頃に通ったスーパーもまた解体されていたということ。営業終了から長い年月が経っていることは知っていたが…
この店には、今も鮮明に覚えている冬の日のエピソードがある。
なぜか、どうしても凧揚げがしたくて父と妹と、「凧」を探し回っている途中、この店にやってきた。
店員に尋ねると「いろいろある」と答えてくれたのだが、いくら探しても見つからない。
不思議に思っていると、どうやら店員は「凧」を「蛸(たこ)」と聞き違えていたようだった。
いま思えば、食料品が主体のスーパーで凧を探そうとすること自体、子供心とはいえ見当違いも甚だしいし、笑える話だが、あのときは必死だったのだ。
電器店もスーパーも、どちらも拙い思い出の一部に過ぎない。
どちらも、閉店からこれだけの年月が経っていることを思えば、むしろ建物が今日まで残っていたこと自体、奇跡に近いのかもしれない。
それでも、何十年と存在し続けた街の風景から、自分の一部が消えていくような”空虚感”みたいなものは拭いきれなかった。