8166 父の原風景を辿る
朝、親戚の家の周辺を散策。
バスの車窓から「長崎らしい」と眺めるだけだった山の斜面に建ち並ぶ家々を、自分の足で一歩ずつ確かめる。
平地が極端に少ないこの街特有の風景には、住まう人々の並々ならぬ苦労が透けて見えるようだ。

その後、父と父の姉妹2人と合流し、実家の墓参りへ向かった。
路面電車で墓近くまで行けるものの、電停から先はやはり急な坂道が待ち受けている。
「長崎の人は強制的に足腰が鍛えられる」と思える瞬間だ。

お墓参りを済ませて、ふたたび路面電車に乗車。
前回長崎に来たとき見に来た、建物の中を路面電車が走る「長崎西洋館」の跡地を通る。
3年ほど前に閉館し取り壊しも終わったようだ。
線路もその周りも新しくなっている。気に入っていた名所がなくなったのはさみしい限り。

ランチには、長崎のB級グルメとして名高いトルコライスを選んだ。
80歳前後の面々が、ボリューム満点の一皿を軽々と平らげていく姿には圧倒される。
ふと、彼らの健脚と食欲は、この坂道の街で培われたのかも…なんて思ってしまった。
午後はグラバー園、大浦天主堂へ足を延ばした。
ここは単なる観光地ではない。かつて父たちが暮らした場所であり、彼らにとっては「原風景」そのものだ。
展示物よりも、ここから見える長崎の景色を眺めながら交わされる、きょうだいたちの昔話に耳を傾けることに意味があった。
近くのお寺の境内で三角ベースに興じた話を聞く。大浦天主堂やグラバー園周辺で遊び回っていたのだろう。
かつて父たちが確かにここで生きていたことを知る。その感覚こそが、今回の旅で得た何よりの収穫だった。







