7849 館蔵品展「あの時の風景」
板橋区立美術館で開催中の館蔵品展「あの時の風景」を鑑賞。
所蔵作品、寄託作品のなかから、時代を象徴する風景を描いた作品を紹介している。
冒頭に、《東京・落合風景》、《高田馬場郊外風景》、《風景(下板橋)》、《長崎村の春》といった、1920年代の板橋や練馬付近を描いた風景などが紹介されていた。
いずれの作品も、いまからはちょっと想像できない田園風景が広がっている。
そして、ちょっと注目したのは…長谷川利行《水泳場》という作品。
1932年に発表されたこの作品で描かれているのは、関東大農災の復興事業のひとつとして隅田公園にオープンしたばかりのブール。
解説によれば、当時の写真と比較して、建物や街灯など実在したものを忠実に描いているそうだ。
かなり激しいタッチなので、ちゃんと観ずにざっと流してしまいそうになるが、よくよく観ると、ブールに飛び込む人とか、こっちに目線を向けてる人、プールサイドでくつろいでいる人などが確認できる。
いろいろ検索すると、長谷川利行は「日本のゴッホ」とも言われてるという。
あれ?日本のゴッホといえば、「わだば日本のゴッホになる」と言ったという、棟方志功を思い出すが、調べてみると、山下清と今回紹介されている彼の2人を指すみたいだ。
俳優寺田農の父である寺田政明の作品をはじめ、8点だけ写真撮影できた。

館蔵品展全体を通して感じたのは、館蔵品展でありながら、作品ごとの解説が少なすぎるということだった。なぜこの作品を入手することになったのか、そしてそれらの美術的価値を説明するべきだと思う。
まして、収蔵されている作品は、誰もが知るような作家ではないのだから、なおさらだ。
館蔵品展ということからか、今日は入館無料だったから、もっと入館者がいてもいいと思ったが、”ガラガラ”といった感じ。
落ち着いて鑑賞できるのは良かったけど…。
入口で年齢ごとに並んだカウンターを押して展示室に入ったが、その人数を見ると、大人32人、65歳以上24人で、子供はわずか1人だった。
先述の通り、大人でも解説の物足りなさを感じるくらいだから、子供ならなおさらそう感じるはず。
たとえば、当時の風景を描いた作品と、現在の様子の違いなどを見比べてみるなど、美術だけにとらわれない学びなどのきっかけを作れば、きっと、ちびっ子でも楽しいと思うのだけど、どうだろう。