7756 2025年3月11日をいわきで過ごす

今年の3月11日はどうするか?
仕事も忙しくて、去年のように宿泊をともなう日程は組みづらかったので、日帰りで計画を検討した結果、福島県いわき市に行ってみることにした。
いわきには、乗り換えとか、カプセルホテルの前泊地では来ることはあるが、目的地として来たのはかなり久しぶりかもしれない。
本当は公共交通機関だけで出かけたいところだが、どうしても不便なところにも足を伸ばすし、何より時間がないので、どうしてもレンタカーの利用が増える。
今回もレンタカーで移動。
レンタカーの担当の方と、震災のあった時の話をした。
そのなかで、食べ物の保存の面からは、震災時寒かったのが良かったという話があって、なるほど、そういった側面もあったのか…と、気付かされた。

今日、まず向かったのが「いわき市石炭・化石館 ほるる」。
いわきは、言わずとしれた、常磐炭田で栄えた街だし、常磐線もこの付近で産出される石炭を運び出すことを使命として建設されている。
石炭とは切っても切れない関係にある。
地面に関心が向くからか、多くの化石が発見されているのも、いわきの特徴で、この付近の地名のついた恐竜なども多い。
その石炭と化石を詳しく紹介しているのが、この施設だ。
まずは化石展示室で、数多くの化石に圧倒される。
本物の化石に触れられるのは、なんとなくテンションが上がる。
本当は、もっと見たいところだが、まだまだ予定があるので、先を急ぐ。続いて、模擬坑道へ。
エレベータで降りていく演出がニクイ。
模擬坑道に降りると、古い時代から順に坑道の作りや、その次代の掘り方などが紹介されている。どんどんと近代化し、効率化していく様子がわかる。
その一方で、石炭そのものが時代から取り残されていった事実を重ね合わせると、なんだか切なくなってくる。

炭鉱は人々の生活とともにあった。
昨年、TBSのドラマ「海に眠るダイヤモンド」では、軍艦島(端島)の炭鉱が舞台だったから、常磐炭田でも、同じような世界があったかもしれない。
次に向かおうとしたら、D51型蒸気機関車が展示されていたので、ちょっとだけ見てみる。
すると、そのすぐ脇を常磐線特急ひたちが通り抜けていくのが見えた。

続いて向かったのが「アクアマリンふくしま」。
こちらも20年くらい前に一度来たきりだったから、すっかり忘れていた。
冒頭は、生体のユーラシアカワウソの隣に「最後のニホンカワウソ」というパネル展示。
この写真が撮られた以降、見られなくなったのだという。
このニホンカワウソ、どんな思いで過ごしてたのだろう…。
もちろん、水槽を用いた魚などの展示も多いが、温室のような場所や、標本やパネルなどを用いた博物館的な紹介など、”水族館”という概念を超えた説明も多く、見ごたえがある。
じっくり見れば、とても短時間では終わらなそうだ。
構造的にも建築的にも、いろいろ気になるところは多い。
特徴的な建物は、間近より少し離れて見るとよく分かる。
アクアマリンふくしまのすぐ近くにある、物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」へ。
もうお昼はだいぶ過ぎているが、ここでランチ。
せっかくなら、海鮮丼でも食べてみようと思って、思い切って注文したが、なんとも言えない内容だったのが、ちょっと残念。

次の目的地、「いわき震災伝承みらい館」に向かう途中に、塩屋崎灯台があるのは知っていた。
せっかくなので、ちょっと寄ってみようと思って、駐車場に車を止めて見に行ったら、到着した10分ちょっと前に終了してしまっていた。
「できれば行こう」くらいの感覚だと、こういった中途半端なことになってしまう…。

3月11日に合わせて出かけてきたことを考えると、このあとの「いわき震災伝承みらい館」が、もっとも重要な目的地ということになるかもしれない。
各地の伝承施設と比べると、パネルなどの紹介が多めで、当時を伝える展示物は控えめな印象。
展示室奥の一番目立つところに、震災当日に行われた卒業式に合わせて書かれた黒板の寄せ書きが展示されていた。
この直後に起こることを知っているから、この寄せ書きを見るのがつらくなる。
ただ、今日は、特にイベント開催のため、ここでの展示をじっくり見るのがちょっと難しい感じだった。
あまり大きく紹介されていなかったが、市が保管していた震災時の遺留品は、今年を最後にお焚き上げされることになったようだ。
ずっと残しておいてもいいんじゃないかとも思えるが、劣化が進んでいるために保管が難しくなったそうだ。
いわき震災伝承みらい館の屋上で、地元の子どもたちが遊んでいた。
年齢から見て、もう震災のことはまったく知らないだろう。
まだまだ記憶に新しい気はしているが、知らない世代は確実に増えている。
海に出てみると、砂浜に花束が手向けられていた。
14年前の今日、この海がたくさんの命を奪ったのだ。
今日は穏やかな様子からは、そんな事実をまったく感じさせなかった。
