7682 展覧会「カナレットとヴェネツィアの輝き」

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展覧会「カナレットとヴェネツィアの輝き」
展覧会「カナレットとヴェネツィアの輝き」

新宿のSOMPO美術館へ。

18世紀、ヴェドゥータ(景観画)の巨匠「カナレットとヴェネツィアの輝き」という展覧会を鑑賞。

ここに、初耳の単語が2つある。

まずは、ヴェドゥータ。
ヴェドゥータ(Veduta)とは、都市景観や古代遺跡などの景観を、遠近法理論に基づき正確に描き出した絵画をいうそうだ。

そして、カナレット(1697年 - 1768年)。
彼は18世紀に活躍したイタリアの画家で活動の中心はヴェネツィア。そして特に知られているのが「ヴェドゥータ」なのだそう。

ガイドで場所を確認しながら…
ガイドで場所を確認しながら…

簡単な説明の書かれたガイドには、ヴェネツィアの地図があって、どこからどのような方向で描かれたであろう場所の説明がある。

ヴェネツィアには行ったことはないが、まるで現地から見た風景の説明を受けているような感じで楽しかった。

機会があれば、一度ヴェネツィアに行ってみたいと思った。

ヴェネツィアの街の雰囲気によるものか、描かれている内容がレガッタ(ポートレース)や昇天祭のような、街全体が盛り上がるようなイベントが多いせいか、どの作品もとても明るく、見ていても楽しくなる。

どれも細かく細密に描き込まれていてリアルだ。

その場に居合わせているかのような臨場感もある。

カナレット《カナル・グランデのレガッタ》
カナレット《カナル・グランデのレガッタ》
人があちこちに!
人があちこちに!

興味深いなと思うのは、これだけリアルな絵でも、実際に同じ場所にたっても、絵と同じ風景を見ることができないということ。

見どころをうまい具合に組み合わせたり、まだ完成していない橋を描いてみたり、フィクションを散りばめていたりするのだ。

これは”騙している”わけではなく、こうした”需要”があったのだろう。

カナレット《昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ》
カナレット《昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ》
カナレット《ロンドン、北側からウェストミンスター橋を望む、金細工師組合マスターの行進》
カナレット《ロンドン、北側からウェストミンスター橋を望む、金細工師組合マスターの行進》
平日だけどお客さん多め
平日だけどお客さん多め

今回の展覧会は、たまたま平日の午後に訪れたが、予想以上にお客さんは多めだった。

カナレットが、これだけの細密な作品を描けるのは、やはりカメラの存在が大きい。

当時のカメラは、写真を撮るためではなく、景観を写し取って構図を決める際に使ったと言われているカメラ・オブスキュラだ。

実際に見ることができるようになっている。

カメラの構造上、像が左右反転するのが面白い。

カメラ・オフスキュラ
カメラ・オフスキュラ
こんな感じで見える
こんな感じで見える
フランチェスコ・グアルディ《小さな広場と建物のあるカプリッチョ》
フランチェスコ・グアルディ《小さな広場と建物のあるカプリッチョ》

カナレット以外の作品も多く紹介していたが、ここでは、カプリッチョについて触れていた。

「カブリッチョ(capriccio)」とは、イタリア語で「綺想」や「気まぐれ」の意味だそう。

現実の景観描写から離れて、実在するものや空想上のものを自在に組み合わせ構成した、架空の景観画のことだそう。

これもいかにもありそうな風景だが、実際には、ここで描かれているような広場はなく、他の建物に囲われているらしい。

で、思い出したのが、カジュアル・イタリアンレストラン「カプリチョーザ」。

由来は同じようだ。

ウィリアム・エティ《溜息橋》
ウィリアム・エティ《溜息橋》

この作品もなんだかとても気になった。運河を挟んで左右の建物を結ぶのは「溜息橋」と呼ばれる橋だ。なんだか演歌の曲名みたい名前だなと思ってしまった。

もっともここは、単に自分が知らなかっただけで、ヴェネツィアではかなり有名なスポットのようだ。

この橋を通って投獄される囚人が、美しいヴェネツイアを見られるのもこれが最後と溜息をついたことから、そう呼ばれたそうだ。

絵の下の方には、何やら怪しい人影があって、処刑された人がゴンドラに乗ってはこばばれていくことを示しているかのよう。

夜空の星が囚人を見守っている…という、いろいろなドラマが盛り込まれた感じだ。

Posted by ろん