科学がつきとめた疑似科学/山本 輝太郎、石川 幹人
- 科学がつきとめた疑似科学」
- 山本 輝太郎、石川 幹人
- エクスナレッジ (2024/2/3)
疑似科学とは「科学的であるかのように見えるが実は科学的とは言えない主張や言説、情報」のことをいうそうだ。
身近で“科学”としてまことしやかに認識されているような、ホメオパシー、デトックス、ブルーライト、高圧送電線や携帯電話の電磁波、牛乳有害説、水素水、マイナスイオン、イチョウの葉エキス、GABAなどなど、それらが、実は“疑似科学”であることを丁寧に説明していく。
科学において「因果関係」を意識することは非常に重要なことだが、因果関係の背後に隠れる「擬似相関」を考えることが大切という。
これを見誤ると「図書館の多い街は犯罪件数が多い。ゆえに街に図書館を作ったら犯罪が増えるに違いない」という、トンデモ意見が出てしまう。
これは極端な例かもしれないが、ニュースなどを見ていると、意外と擬似相関を根拠にしていそうな意見は少なくない。
気をつけていても、ころっと騙されてしまうのは、相関関係はふたつの異なる事象の単なる関係性のため、説得力が低く「意味」を持たせにくく、分かりやすさを重視するメディアなどの情報は一方的にななりがちだからだ。
2つの事象の関係を強く疑い始めると、“陰謀論”に陥る可能性があるという。
これは根拠の有無にかかわらず、世の中のさまざまな事象が少数の強力な組織や集団によってコントロールされているとみなしたり信じてしまう傾向のことだ。
世の中が複雑になると、その解決も複雑になる恐れはあるが、それを何とかシンプルに考えようとすると、陰謀論に振れていってしまうのは理解できる。
あらためて身の回りを見てみると、本当に疑似科学にあふれている。
「効いた」とか「改善された」みたいなCMなどをよく見る。
でも、そういった事例報告はあくまで「事例」であるため、万人にあてはまる一般的な知見(=一般化)かどうかはわからない。
まさに、健康食品やサプリメントでもよく使われる手法だ。
ブルーベリーが目にいい…というのは、もうずいぶん前から言われているものの、実際に効果が疑わしいという話も聞く。
これは、かつて英国空軍のパイロットが「ブルーベリーを食べて視界がよかった」と話したことがきっかけらしいが、実際はなんとブルーベリーではなくてニンジンだったらしい。
国が厳密に評価している「特定機能食品」と論文のレビューさえあれば届けるだけで表示可能な「機能性表示食品」についても触れていた。
機能性表示食品であった小林製薬の紅麹は、トラブルの収束が今もはっきりしない。
あらためて、科学に対するリテラシーについて考えさせられるできごとであった気がする。
本書は「科学リテラシーの入門書」という感じで読んでほしいという著者の言葉にあったように、とても読みやすく、今後メディアなどに接するときにも役に立ちそうな情報が豊富だった。