7607 展覧会「金井一郎 翳り絵展」

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武蔵野市立吉祥寺美術館へ
武蔵野市立吉祥寺美術館へ

渋谷の松濤美術館での鑑賞のあと、同じ井の頭線沿線…ということで、武蔵野市立吉祥寺美術館へ。

この美術館は、かなりこぢんまりとしているが、いつもちょっとユニークな企画展が多い気がする。

今日鑑賞したのは「金井一郎 翳り絵展 -「銀河鉄道の夜」を巡る旅-」というもので、彼独自の技法「翳り絵(かげりえ)」で表現された宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』の世界を紹介する企画展だ。

展示室内は暗いので気をつけて…と言われて、言うほど暗くないだろう…と思って、展示室に入ると、本当に暗かった。

目が慣れるまでは、状況がよくわからないほど暗かった。

最初のコーナーは、植物の形状を活かしたさな光を仕込んだランプ、玄関や玄関付近のジオラマなど、物語が始まりそうなオブジェが展示され、続いて、メインの展示である翳り絵が紹介されている。

写真撮影が一切不可ではあるが、翳り絵は、間違いなく実物を見ないと絶対に良さが伝わらない。

写真だとどうしても平面的に写ってしまう。

「金井一郎 翳り絵展」
「金井一郎 翳り絵展」
写真ではなかなか伝わりづらい
写真ではなかなか伝わりづらい

まるで夢を見ているような、幻想的で不思議な感覚になる作品の数々だった。モチーフとなった「銀河鉄道の夜」は、内容をほとんど忘れてしまったので、もし知っていたら、より楽しめたのではないかと思う。

独特な雰囲気
独特な雰囲気

ひと通り展示を鑑賞して、最後に、展示室外にあった作品制作にかかわる展示を鑑賞する。

作者の金井一郎は、これまで100点を超える作品を完成させてきたそうだが、写真に記録すると壊していた(!)そうだ。

「写真では持ち味が大幅に薄れるのはわかっていたけど、人に見せるものではないと考えていたから」なのだそうだ。

高校2年のとき「銀河鉄道の夜」を視覚化しようと思い立つ、初めは影絵や切り絵で制作していたが、「独特の透明感や暗さを表現するには平坦すぎたという。

大学入学後、透かしをヒントに、針で無数の孔をあけた黒いラシャ紙を重ね、開け方を変えた紙を重ねることで立体的に見えたそうだ。

試行錯誤のうえ、独特の立体感と透明感を創り出す「翳り絵」が完成する。

作者の世界観をどうしたら現実のものにできるかという、徹底的なこだわりが伝わってくる気がする。

Posted by ろん