7589 特別展「没後300年記念 英一蝶」

有名なのにちっとも知らない画家や絵師って本当にたくさんいるんだなと思ってしまう。
サントリー美術館の特別展「没後300年記念 英一蝶―風流才子、浮き世を写す―」を鑑賞するにあたって、少し”予習”をしていった。
”主役”である、英一蝶(はなぶさいっちょう)は、江戸中期に活躍した波瀾万丈な人生を歩んだ絵師だ。
松尾芭蕉などと親交を持ち俳人としても認められた一方、狩野派に入門していたがで破門になっている。
狩野派は浮世絵や風俗画を描くことは禁止だったということもあるのか、いろいろ検索してみると、彼の才能を妬まれたから…なんてこともあるらしい。
写真撮影は、屏風《舞楽図》だけが可能となっていた。
小さめな作品が多かった一蝶にとって、両面屏風は珍しい大作らしい。
よく見ると、登場する人物の衣装がものすごく細かく描かれていて、多大な労力と時間が費やされたようだ。
投獄されたり、三宅島への流罪(島流し)などを経験している。
三宅島では江戸からの仕送り(画材)で絵を描いていたそうだ。
通常、島流しは、一生帰ってこられないものらしいが、奇跡的に12年で江戸に戻ってくることができたらしい。
こうした経緯とともに作品を鑑賞していくと、より面白く感じられる。
《投扇図》は、扇を鳥居の隙間に投げる男たちが描かれているが、彼らの躍動感ある動きや、指を指す人、目線で追っている人など、絵を見る人の視線をうまく導いているようだ。
《雑画帖》は、動物や植物、名所などさまざまな画題を描いた36枚を1帖にまとめたもので、まさに彼の画力を見せつけられる作品となっている。《睡猫図》のもふもふの猫、《牧牛図》では牛の中に犬が紛れ込んでいたり、《寒山拾得図》ではまさに顔にいたずら書きしようとしてるところだし、《破傘人物図》は破れた傘から顔を覗かせるなど、それぞれに味がある。
《雨宿り図屛風》は、もっとも興味深く感じた作品の一つ。さまざまな身分の人たちが雨宿りする光景を描いている。雨は、身分も老いも若きも、男女問わず万人に等しく降り注ぐもの…という、一蝶の市井の人々に対する心情をよく示している。