7580 特別展「昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界」
泉屋博古館「特別展 昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界」を鑑賞。
陶片を使ったモザイク画を手がけた板谷梅樹の作品を紹介する展覧会。
もちろん初めて聞いた名前だったし、Wikipediaにも載っていない…という感じだと、世間一般に知られた…ということではなさそうだ。
今回の展覧会において写真撮影できる唯一の作品が、《三井用水取入所風景》 1954年(昭和29年)だった。
現存する梅樹作品最大のモザイク壁画で、高さ3.7m、重さ800kgもあって圧倒される。
当館の展示において、フォークリフトで搬入したのは初めてだそうだ。
横浜市からの依頼で制作されたということで、四隅に横浜市の徽章が見える。
大きなモザイク画は、間近で見るとどうしても繊細な表現は難しい。でも、離れて見ると、自分の頭の中でディティールを補正する感じで、描かれた風景のイメージが膨らんでとても味わいが感じられる。
モザイク画は、描こうとする作品に合った色や雰囲気を持つ陶片を探し、それに必要な加工を行なっていくという、ちょっと独特な制作過程を辿る。
勝手な想像だけど、直接描かないぶん、ストレスになりそうだ。
そして、モザイク画は、建築物に設置されることが多いため、改修や建て替えなどで無くなることも多いという。
そういうこともあってか、出世作と言われている旧日本劇場一階玄関ホールの巨大なモザイク壁画は、実物の展示ではなく、写真だった。
その後も、比較的こぢんまりしている作品が多く、後半は板谷梅樹の作品ですらなく、家族の作品の紹介になってしまうほどだった。
彼の父親は、陶芸家としては初の文化勲章受章者の板谷波山、母親も作陶や絵画制作をしていたというから、まさに芸術家一家だった。
板谷波山の作品は、明治以降の陶磁器としては初めて国の重要文化財の指定を受けているほど。
今回その作品も紹介されていたが、当然見事だった。
ただ、展覧会のタイトルからすると、たくさんのモザイク画を期待していたので、出オチ感は否めなかったのが、ちょっと残念。