7556 「ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム」
パナソニック汐留美術館で開催中の「ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム」を鑑賞。
これまでもさまざまな北欧由来の椅子を見てきたが、ポール・ケアホルムは知らなかった。
ただ、これまでの鑑賞で、彼と関わりのある人物の作品に出会ったことがあったのを、あとから知った。
アルネ・ヤコブセン、フィン・ユールとともに、デンマークの近代家具デザインにおける代表的な人物である、ハンス・J・ウェグナーの事務所に、ポール・ケアホルムが勤務していたらしい。
パナソニック汐留美術館では、入口と出口が同じというこれまでにない動線。
詳細な解説は冒頭と最後に集めて、あと半分以上の面積を占めるのは、ケアホルムの初期から晩年までの作品を年代順に一気に紹介するという、これまでにない大胆な構成だった。
最後の一部で写真撮影可となっていて、常設のルオーの作品を紹介しているコーナーでは、ケアホルムの椅子に座って鑑賞できるようになっていた。
展示室内を往復することで、作品を表からだけでなく、裏からも見ることができるのだ。
おもしろい試みだと思ったが、入口付近で滞留したり、作品ごとの解説がないので、見どころがわかりづらかったり…といった感じで、少々残念な面があったのは否めなかった。
本展は、椅子研究と収集を長年続けてきた織田憲嗣氏のコレクションが中心となっているが、展示のところどころで、彼の音声の解説が自動的に流れるようになっていた。
“椅子は小さな建築”ともいわれると言っていたが、そういえば、建築家が椅子のデザインを手がけることはよくあったのを思い出した。
あと、とても興味深い話として、安定感のない土間に椅子を置く習慣があったため、デンマークは3本足の椅子が多いなんていうこともあった。
ケアホルムの作品も、3本足が多いのだが、これについては、素材としての要素を減らす目的ではないかと話していたが、もともと3本足が多かったというデンマークの環境も影響しているのは間違いないだろう。
たしかに言われてみれば、地面が凸凹の場合、4本ではなく3本であれば必ずしっかり足が地面につく。
これまで木工家具が主流だったデンマークにおいて、ケアホルムは鉄、大理石、革、ガラスといったさまざまな素材も使って、機能的で美しいデザインの作品を生み出した。
鉄や大理石、ガラスという素材を使っても、それらが本来もつ“硬くて冷たい”という特徴が抑えられ、人に寄り添うような“温かみ”すら感じられるようになるから不思議だ。