7537 展覧会「浮世絵お化け屋敷」
個人的にお化け屋敷は嫌いだ。
そもそも怖いのが苦手なので、自分からお化け屋敷に行くことはない。
でも、今回の太田記念美術館で開催中の展覧会「浮世絵お化け屋敷」であれば、しっかりと鑑賞できそうだ。
入館料金を支払うための行列が長く続き、入館してからも、かなりのお客さんで混雑していた。
外国人はもちろん、比較的若い人が多い印象だった。
歌舞伎のような難しい題材ではなく、見たままでイメージしやすい内容なので、とっつきやすいと言うのはあると思う。
さて、今回の作品のテーマは、妖怪や幽霊を描いた浮世絵を集めたもので、当時描かれた時点で、当然見る人に”怖がって”もらおうと思っていたはずだ。
そして、それが100年以上経っても、こうして同じように”怖い”と感じながら鑑賞しているということは、そこは昔も今も変わらないものなのだろう。
おどろおどろしい感じが、作品から滲み出てくる。
蛙や河童などが登場すると、つい相撲を取らせたくなるらしい。
なぜか妊婦を傷みつけるような作品が多いような気がした。
「なんて酷いことを!」と思う気持ちは、昔も今も変わらないのだろう。
月岡芳年《奥州安達がはらひとつ家の図》は、胎児の血を必要としていた老婆が、実の娘とら知らずに殺めようとしている場面のようだ。そして、作品とは直接関係がないが、すごいと思ったのは、この作品が、なんとマウスパッドになっていてAmazonで売られていたことだった。
続いて、歌川国芳《風流人形の内 一ツ家の図 祐天上人》も、今まさに妊婦の腹から胎児を奪おうとする場面。よく見ると、床下に骸骨が並んで怖い。
月岡芳年《和漢百物語 登喜大四郎 (和漢百物語)》には、印象的な、腹に顔がある如来と、その背後に、なぜか骸骨が歓声を上げている。
歌川広景《江戸名所道戯尽 二 両国の夕立》は、隅田川に落ちた雷神が河童に引き込まれそうになったところ、放屁して難を逃れる…という話。
葛飾北斎《『北斎漫画』三編》には、ナマコやカワウソ、アザラシに加えて、人魚、そして河童が登場しているが、その河童は、なぜか膝を抱えている。もはやゆるキャラそのもの。調べてみたらこんなピンバッジにもなっていた。
歌川広景《江戸名所道戯尽 十六 王子狐火》は、狐たちが大名行列ごっこをしている。籠にはご満悦の表情のおじさんが乗っている。すっかり騙されているのだ。そして、よく見ると槍の代わりにとうもろこしを持ってるのもおもしろい。
作者不詳《海出人之図》は、海の中から登場した女性が「これから伝染病が流行るが、自分の姿を絵に描いて家内に貼ると難を逃れる」と予言して消えたという伝説を描いたもので、これは、まさにアマビエに通じるものだ。あれ?アマビエはどこに行ってしまったのだろう。
三代歌川国輝《本所七不思議之内 狸囃子》 は、本所だけで七不思議があったということ自体不思議だったが、かつてはそんな話が出てしまうほど、うら寂しい場所だったのだろう。この話は、どこからともなく狸囃子が聞こえてくるので、どこから聞こえてくるのか、あちこち探し回るが見つからず、くたびれ果てて家に戻り寝てしまったが、目覚めると野原だった…というオチ。