7500 「三島喜美代―未来への記憶」展

博物館・展覧会,芸術・デザイン

「三島喜美代―未来への記憶」展を鑑賞のため、練馬区立美術館へ。

実は以前から作品は知っていた。

天王洲アイルにあったパブリックアートがあまりに印象的だったからだ。

巨大なゴミ箱に、捨てられたゴミまで巨大化している。

初めて見たときのインパクトは、いまでもしっかり覚えている。

練馬区立美術館に入ると、チケット売り場に長い行列ができていた。

会期が明日までということと、主役の三島喜美代が先月亡くなったばかりということで、注目を集めていたのかもしれない。

練馬区立美術館
練馬区立美術館
先月亡くなった
先月亡くなった
初期のころの作品も紹介
初期のころの作品も紹介

第1章は、初期の作品を中心に紹介。

平面の抽象画の作品が多いが、新聞や雑誌などのコラージュなどもあり、その後の作品に通じるところが垣間見えるのが興味深い。

夫の貯めていた馬券(勝馬投票券)をずらりと並べた作品などもおもしろい。

その後の作品に通じている
その後の作品に通じている
馬券が使われている
馬券が使われている
このタグがワレモノ
このタグがワレモノ

第2章 「割れる印刷物」は、自身の絵画にもう一つ迫力がない、緊張感がないと感じていたところに、くしゃくしゃになった新聞紙を陶で作ったらどうなるかと考えたことがきっかけだったという。

紙に印刷された情報を陶に写し替えることを「情報の化石化」と呼んでいた。

触れたら割れるかもしれないという緊張感が、作品に強いメッセージ性を持たせることができると考えたようだ。

さまざまなものを陶にしている。

チラシも陶にした
チラシも陶にした
タグ以外本物の新聞紙だった
タグ以外本物の新聞紙だった

第3章「ゴミと向き合う」では、かつて電子メディアが普及する前は、情報が膨大であれば あるほど、物理的なゴミの量も膨大になる現実があって、それらに埋没させないようにするために「割れる印刷物」が生み出された。

その後、問題意識が情報からゴミそのものに移り、空き缶や段ボールなど身近なゴミがモチーフとなっていく。

さらに陶土も有限の資源であることから、産業廃棄物を焼いてガラス状にした溶融スラグと廃土を混ぜた土で作品制作を行うなどもしていたそうだ。

巨大な漫画雑誌
巨大な漫画雑誌
ちょっと懐かしいゴミ箱
ちょっと懐かしいゴミ箱
溶融スラグはガラス粒みたい
溶融スラグはガラス粒みたい

一部、作品などに触れられるコーナーがあった。作品の素材として使われている、溶融スラグは、ガラスの粒のような感じ。

空き缶は、見た感じと触った感じのギャップがおもしろい。

軽そうに見えて、ズシリとくる。

缶の裏には、ちゃんと作者のサインが入っていた。

実際に触れられる作品も!
実際に触れられる作品も!
ちゃんとサインが入っていた
ちゃんとサインが入っていた

第4章「大型インスタレーション」では、今回の企画展でもっとも大きな展示《20世紀の記憶》がある。

ふだんは大田区の「ART FACTORY 城南島」で常設展示されているそうで、今回初めてまるごと移設して展示されているという。

《20世紀の記憶》
《20世紀の記憶》
注目すべき記事がたくさんあった
注目すべき記事がたくさんあった

紹介の説明には「不揃いのレンガによって眼前に広がる 沈黙の風景は、時が凍結したかのようであり、情報洪水に飲み込まれた SF風終末世界のようにも、戦争によって焼け野原になってしまった都市の廃墟にも見える」とあった。

20世紀に発行された新聞記事が、実に10600個の耐火レンガに転写されている。

プーチンが大統領になったとか、金正日が国家最高位になったなど、その後の世界にも大きな影響を与えるような記事の読み取れた。

全体を通じて、ちょっと気になったのが、作品のタイトルだ。

untitledやただの整理記号のようなタイトルの作品がとても多いのだ。

長いタイトルや、凝った詩的なタイトルだったりする作家のいる一方で、こういった作品のタイトルは、作者の作品に対する考え方が表れているようで、とても興味深い。

彼女の場合、作品さえ見てもらえたら、タイトルなど不要と考えたのかもしれない。

Posted by ろん