7484 「殿さまのスケッチブック」展
日本の博物学は、中国の薬学・博物学である「本草学」の影響を受けて発達し、18世紀江戸時代になると、各地で「博物趣味」に熱中する大名が多く現れたという。そのひとりが細川家熊本藩6代藩主の重賢(しげかた)で名君だったそうだが、動物、昆虫、植物などに強い関心持ち、精緻な博物図譜を作らせた。
そんな図譜描かれた“スケッチ”を紹介する展覧会だ。
とてもリアルな“スケッチブック”はいろいろと見どころがあったが、残念ながら、作品含めて館内すべて写真撮影不可…。
ムジナ(アナグマ)や、ムササビなどさまざまな動物や植物のリアルな姿をみると、なぜ、これが人を描くことに生かされなかったのかと、いつも思ってしまう。
そして、ところどころで、やたらとこだわる対象があるのも、興味深かった。
たとえば、トウガラシだけで50図もあるとか、ハナショウブだけで品種名とともに89種描かれているとか…どういう理由があるんだろう。
昆虫が、幼虫からサナギ、そして成虫になる過程を日付と精密な姿とともに記録した「昆虫胥化図」(こんちゅうしょかず)は、昆虫生態記録としては、日本初だそうだ。
そういった分野に目を向けられるというのは、殿さまの関心もさることながら、政治以外にも関心を持てるだけの“余裕”がある証拠なのかもしれないとも思った。