7479 国立の解体撤去決定のマンションを見てみる
竣工済のマンションが取り壊されるとなったら、ただことではない。
施行ミスや欠陥などがあった場合であればやむを得ないが、そうしたことでなく、商店街から見える富士山の景観の問題がその理由だったということで、大きな話題となった。
実際のところ現地はどうなんだろう…と気になって、直接見に行ってみた。
朝の中央線は新宿からだとかろうじて座席が空いているくらい空いている。
乗ったのは中央特快で、中野、三鷹、国分寺、と停車するごとに、お客さんが増えていく感じだった。
国分寺から各駅停車に乗り換えて国立へ。
国立駅は、もしかすると降りたのは初めて下車したかもしれない。
高架下の改札口のすぐ上に、ツバメが巣を作っているようだった。
見るとあちこちに巣があって、かなりの数のツバメが飛び交っていた。

駅前には復元された駅舎とバス停留所などの広場があって、見通しがよい。
まだ7時前だから通勤ラッシュちょっと前の時間といったところだろうか。行き交う人の数は少ない。
現場となったマンションは、駅から徒歩10分くらいのところにあるという。
ただ、今回の問題は、このマンションによって富士山が見えなくなることだから、まず確認すべき“現場”は、マンションから離れた、この駅前場所ということになる。
薄曇りのせいか、富士山はまったく見えなかった。

問題のマンションへ向かって歩く。
現地に着いて、ちょっと驚いたのは、そのマンションのほぼ向かいに同じくらいの高さのマンションが建っていたということだった。

仮囲いには、取り壊しが行われる旨の張り紙があった。しばらく眺めていると、地元の方と思われる中年男性から「マンションを見にきたの?」と声を掛けられた。
実際、富士山が半分くらい欠けちゃうんだから解体も仕方がないけど、マンションの会社も気の毒ではあるね…と話してくれた。
ただやはりしょっちゅう見えるわけでもないとも言っていた。
そう考えると、富士山が見えるわずかな時間だけのために、完成したマンションを取り壊すのか…というとちょっとやりすぎな気はしてくる。
そう思いつつ、あらためてマンションを眺める。
引き渡しを来月に控えていたいということで、10階建ての建物はほぼできあがった状態だ。
8階から最上階までの3世帯分には、富士山の方向に張り出した“展望室”があるような作りになっている。
おそらく、富士山を一望するためだろう。
こうして見ると、たとえわずかな時間であっても、地元で共有してきた景色を、この3世帯に奪われるというのは、やはりいい気はしないのもわかる。