7471 「名品ときたま迷品」展
「メイヒン」といえばふつうは「名品」だろうが、あまり出品されることなくその価値の判断に迷う「迷品」もある。
美術館に収蔵される作品は、どれも名品ばかりということはなく、もしかすると迷品ほうがむしろ多いんじゃないかとすら思う。
一部の作品で写真撮影が可能となっている。
第1章 漆工 生活を美で彩る
第2章 絵画 おおらかな心で愛でる
第3章 陶磁 人類最良の友と暮らせば
第4章 染織と装身具 装わずにはいられない
第5章 茶の湯の美 曇りなき眼で見定める
第6章 ガラス 不透明さをも愛する
今回の展覧会は作品そのものを鑑賞することもさることながら、作品の解説と一緒に書かれている「学芸員のささやき」を読むことがとても大事だ。
というのも、なぜこの作品が迷品である理由や、その価値などの説明があるからだ。
まず一番最初に登場するのは《鞠・鞠鋏》だ。本展のポスターにも採用されている、この作品、最初見た時は、太鼓のような楽器みたいなものかと思ってしまった。
実物を見れば、蹴鞠用の鞠…のようだ。
この《鞠・鞠鋏》の「学芸員のささやき」では、この作品を「現代蹴鞠界のスター」と呼んでいた。
このような鞠鋏の形式はほかに例がなく、 本作以上に状態が良く形の美しい胸も、 もう残っていないのではないかといわれて いるとのことで、これぞ、現代の職制作者が目指す理想の姿ともされていて、実は人知れずを集めているのだという。
たしかに穴が開いてひて紐を通せるようになっていることがわかる。
サントリー美術館にしては、今回は比較的写真撮影可能な作品も多かった。
《兎蒔絵茶箱》野外での野点に携行したものかもしれないという。デフォルメされたウサギの姿は、現代にも通じる気がする。
《乳白色ツイスト脚付盃》江戸時代の職人たちがヨーロッパのレースガラスを模して作ったらしい。どのように作られたのか諸説あるそう。
今回の展覧会では、たとえ価値のある作品であっても、どういったときに展示させられるかタイミングが難しいこともわかって、興味深かった。
サントリー美術館は収蔵品を持ちながら常設展はないので、展示できるきっかけはどうしても限られてしまい、よりこうした「迷品」が生まれてしまうのかもしれない。